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五百継(いほつぐ)等(ら)何時(いつ)まで矢種(やだね)を費(ついや)すべき。只(たゞ)打渡(うちわたつ)て蹴散(けちら)せよと犇(ひしめ)き三百 騎(き)
五百 騎(き)追々(おひ〳〵)に川を渡(わた)り太刀(たち)抜連(ぬきつれ)喊(とき)を発(つくつ)て打てけれども楯(たて)の蔭(かげ)にひかへし
賊軍(ぞくぐん)鬨(とき)をも合(あは)さず静(しづま)り反(かへつ)て在(あり)ければ。宦軍(くわんぐん)も敵(てき)に謀計(はかりこと)ありやと疑(うたか)ひ少時(しばらく)
猶予(ためらひ)ける。元来(くわんらい)賊将(ぞくせう)大熊丸(おほくままる)の幕下(ばつか)に智才(ちさい)の者(もの)有(あつ)て。京軍(きやうぐん)を欺(あざむ)かんと多(おほ)く
藁(わら)木偶(にんぎよ)を造(つく)り。紙(かみ)にて甲冑(かつちう)を作(こしらへ)て着(きせ)旌(はた)旗(のぼり)も紙(かみ)を以(もつ)てし。大 勢(ぜい)屯(たむろ)せし体(てい)に
もてなし。其後(そのうしろ)に二百人ばかりの士卒(しそつ)をおき。仮(かり)に喊(とき)を発(つく)り矢(や)を射(い)させたるにて。京
軍(ぐん)の川をわたる時分(じぶん)は。賊兵(ぞくへい)皆(みな)退(しりぞ)き。山蔭(やまかげ)杜中(もりのうち)などに埋伏(まいふく)せしなり。宦軍(くわんぐん)は
敵(てき)にかゝる偽(いつはり)の計(はかりこと)ありともしらず。よしや敵(てき)に少(せう)〱(〳〵)の謀計(ばうけい)ありとも何程(なにほど)の事か有(ある)
べき。かゝれや伐(うて)やと呼(よば)はり勢(いきほ)ひ猛(たけ)く鋒(きつさき)を揃(そろへ)て打(うつ)てかゝれば。素(もとよ)り藁(わら)木偶(にんぎよ)のこと
ゆへ。太刀(たち)の当(あた)らぬさきに。ばらり〳〵と仆(たを)れけるにぞ。京軍(きやうぐん)是(これ)をよく〳〵見れば皆(みな)藁(わら)
土偶(にんぎよ)なり。是(これ)によりて衆卒(みな〳〵)大いに腹(はら)を立(たて)悪(にく)き賊徒(ぞくと)の謀計(ばうけい)かなとて蹴散々々(けちらし〳〵)