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かけ抜(ぬけ)て向(むかふ)を見れば。山根(やまぎは)に旌旗(せいき)を飜(ひるがへ)して賊軍(ぞくぐん)屯(たむろ)せし体(てい)なれば。あれ伐散(うちちら)せよ
と駈(かけ)り行(ゆく)先陣(せんぢん)の大将(たいせう)墨縄(すみなは)も賊(ぞく)に欺(あざむか)れしを憤(いきどふ)り。味方(みかた)に続(つゞい)て馳(はせ)いたりけるに。是(これ)
もまた空陣(くうぢん)なりければ。衆兵(みな〳〵)惘(あきれ)はて。長途(てうど)を励(はげ)しく駈(かけ)て人も馬(むま)も疲(つか)れけるゆへ
勢(せい)を立(たて)て少時(しばらく)息(いき)を休む(やすむ)るところに思(おも)ひもよらぬ山蔭(やまかげ)より一千 騎(き)余(あまり)の賊兵(ぞくへい)殺(さつ)
出(しゆつ)し衣川(ころもがは)の北岸(ほくがん)に群(むらが)り京軍(きやうぐん)の帰(かへ)る路(みち)を切塞(きりふさぎ)けるにぞ。京軍(きやうぐん)駭(おどろ)き須波(すは)敵(てき)は
彼所(かしこ)へ出(いで)て帰(かへ)る路(みち)を塞(ふさぎ)しぞ。憎(にく)さも憎(にく)し一人も余(あま)さず鏖(みなごろし)にせよと呼(よば)はり駈向(かけむか)は
んとする内(うち)に此所(こゝ)彼所(かしこ)の杜(もり)林(はやし)竹藪(たけやぶ)なんどより。二百 騎(き)三百 騎(き)の賊兵(ぞくへい)追々(おひ〳〵)に起(おこ)
り立(たち)労(つかれ)果(はて)て隊(そなへ)も立(たて)ざる宦軍(くわんぐん)に矢(や)を射(い)かけ喊(とき)を発(つくつ)て伐(うつ)てかゝる宦軍(くわんぐん)又 是(これ)に
駭(おどろ)きながら物々(もの〳〵)しやと敵(てき)にわたり合(あひ)鎬(しのぎ)を削(けづ)つて戦(たゝか)ふといへども。不意(ふい)を打(うた)れて心 周(あは)
障(て)隊(そなへ)乱(みだ)れて見えける所(ところ)に。又 賊将(ぞくせう)大熊丸(おほくまゝる)一千 騎(ぎ)将(ひい)て山 蔭(かげ)より殺出(さつしゆつ)し宦(くわん)
軍(ぐん)を中(なか)にとり籠(こめ)雨(あめ)の如(ごと)く矢(や)を射(い)かけ喚(おめ)き叫(さけ)んで攻立(せめたて)けるにぞ。宦軍(くわんぐん)弥(いよ〳〵)戦(たゝか)ひ難(なん)