Gallicaの日本資料を翻刻!

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淀川(よとかは)を泝(さかのほ)【沂は誤記】りて行(ゆき)候ひしに一 流(▢う)の枝河(えだがは)あり。是(これ)を望見(のぞみみ)候に水上(みなかみ)に金色(こんじき)の光(ひかり)粲然(さんせん)た れば異(あやし)くおもひ。光(ひかり)を目当(めと)として流(ながれ)に添(そひ)遠(とふ)く山路(やまぢ)を分登(わけのぼ)り終(つひ)に当山(このやま)の滝(たき)泉 の下(もと)へ来(きた)り候に。側(▢▢▢▢)【別本に「かたはら」】に草(くさ)を結(むすび)たる菴(いほり)有(あつ)て一人の老翁(らうおう)身(み)に白衣(はくえ)を着(ちやく)し端座(たんさ)せり 其体(そのてい)頗(すこふ)る凡庸(たゝびと)ならず見え候ひしゆへ。拙僧(せつそう)其(その)姓名(せいめい)を尋(たづね)問(とひ)候ひしに。翁(おきな)答(こたへ)て。我(われ)は行(げう) 睿(ゑい)居士(こじ)といふ者なり。往年(そのかみ)より此(この)山間(さんかん)に隠栖(かくれすむ)こと年(とし)久(ひさ)しく。常(つね)に千手(せんしゆ)千眼(せんげん)の神咒(しんじゆ)を 称(となふ)るのみにて。世上(せじやう)の変(うつり)易(かはる)をしらず。我(われ)に一個(ひとつ)の願望(ぐわんまう)有(あつ)て你(なんし)を待(まつ)事 多年(たねん)なり。今(いま) 奇縁(きえん)熟(しゆく)して相会(あひあふ)事を得 怡悦(よろこび)に堪(たへ)ず。我(わが)宿願(しゆくぐわん)と謂(いつ)ぱ別(べつ)の義(き)ならず。当山(とうざん) は観音(くわんおん)の道場(どうでう)となるべき無比(むひ)の霊地(れいち)なり。又 彼処(かしこ)に生(おひ)し老樹(らうしゆ)は無双(ぶそう)の霊 木(ぼく)なれば。彼木(かのき)を以(もつ)て観音の像(ぞう)を彫(きざ)まばやと思(おもへ)り。然(しか)るに我(▢れ)【わヵ】さる子細(しさい)有(あつ)て東(とう) 国(ごく)へ下(くだ)らで不叶(かなはさる)要務(ようむ)あり。依(より)て你(なんじ)我(われ)に代(かはり)て此(この)菴室(あんしつ)に住(すみ)観音(くわんおん)の道場(とうでう)を開(ひら)く べき准備(こゝろ▢▢へ)【注】せよ我(▢▢)も程(ほと)なく帰(かへ)るべし。されども若(もし)我(わか)帰(かへ)る事 遅(おそ)くば你(なんじ)先(まづ)事を成(なし) 【注 別本に「こころがまへ」。】