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になり。いよ〳〵逆威(ぎやくい)を逞(たくま)しうし。其(その)勢(せい)凡(およそ)二万 騎(ぎ)に余(あま)り。然(しか)も悪路王(あくろわう)は霧(きり)を降(ふら)し
雲(くも)を起(おこ)す怪(あやし)き邪術(じやじゆつ)をさへ行(おこな)ひければ。たとへ京勢(きやうぜい)百万 騎(ぎ)ありとも。只(たゞ)一戦(いつせん)に蹴(け)
散(ちら)さん事いと易(やすし)と侮(あなど)り誇(ほこ)り。己(おの)が柵(さく)を出(いで)て宦軍(くわんぐん)の陣営(ぢんゑい)に向(むか)ひ広野(ひろの)に数(す)
箇所(かしよ)の屯(たむろ)をぞ構(かまへ)ける。宦軍(くわんぐん)の大将(たいせう)大伴弟麻呂(おほとものおとまろ)是(これ)を見て。悪(にく)き夷賊(いぞく)の挙止(ふるまひ)かな
味方(みかた)の猛勢(もうぜい)を見ば旗(はた)を伏(ふせ)冑(かぶと)を脱(ぬい)で降参(かうさん)するか。または遠(とふ)く逃退(にげしりぞ)くべきに。尚(なを)
も来(きた)つて虎(とら)の鬚(ひげ)を引(ひか)んとするぞ奇怪(きつくわい)なれ。早(はや)く馳(はせ)向(むか)ひ一 戦(せん)に伐散(うちちら)せよといき
まきけるを田村丸(たむらまる)諫(いさめ)て曰(いはく)。軍法(ぐんほう)にも小敵(せうてき)とて慢(あなど)るへからずと謂(いへ)り。増(まし)て賊兵(ぞくへい)小勢(こぜい)
にあらず。然(しか)も地(ち)の理(り)に委(くは)しければ軽(かろ)んじがたし。味方(みかた)は敵軍(てきぐん)より多勢(たせい)なれども。申
さば諸国(しよこく)の寄合勢(よりあひぜい)といひ。地(ち)の理(り)を委(くはし)く知(しら)ざれば。軽々(かる〴〵)しく軍(いくさ)を仕(し)かけなば。恐(おそ)ら
くは却(かへつ)て敗軍(はいぐん)し鉾先(ほこさき)に疵(きず)を付(つく)るに到(いた)り候べし。只(たゞ)陣営(ぢんゑい)を固(かた)く守(まも)り能(よく)〱(〳〵)敵(てき)の
虚実(きよじつ)を探(さぐ)り謀(はかりこと)を定(さだめ)て後(のち)彼(かれ)を伐(うた)んこそ上策(ぜうさく)にて候はんと制(せい)せられければ。弟麻(おとま)