Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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悶着(もんちやく)す。素(もと)是(これ)悪路王(あくろわう)が邪術(じやじゆつ)を以(もつ)て降(ふら)せし霧(きり)なれば。賊兵(ぞくへい)は霧(きり)のために眼(まなこ)の かすむ事なければ。狼狽(うろたへ)騒(さは)ぐ京軍(きやうぐん)を択(えら)み討(うち)に討(うち)けるにぞ。宦軍(くわんぐん)手負(ておひ)陣没(うちじに)数(かづ) をしらず。只(たゞ)路(みち)を求(もとめ)て逃(にげ)んとすれども。霧(きり)と土煙(つちけふり)に眼(まなこ)眩(くら)みて東西南北(ほうがく)を分(わか)たず さながら盲人(もうじん)の杖(つえ)を失(うしな)ひし如(ごと)くなりけり。時(とき)に坂上田村丸(さかのうへたむらまる)は後陣(ごぢん)に備(そなへ)て。先隊(さきて)の合(か) 戦(せん)の体(てい)を見物(けんぶつ)して居(ゐ)られけるに。敵軍(てきぐん)偽(いつは)り敗(まけ)て退(しりぞく)を。味方(みかた)是(これ)を誠(まこと)に敗(はい)して逃(にぐ) ると心得(こゝろえ)て追行(おひゆく)を見(み)。是(これ)必(かなら)ず敵(てき)の謀計(ばうけい)に中(あた)るべしと思(おも)はれけるに果(はた)して敵(てき)の伏(ふく) 兵(へい)起(おこ)り。加之(しかのみ)ならず俄(にはか)に雲霧(うんむ)の起(おこ)りければ。田村丸(たむらまる)馬(むま)の鞍(くら)を扣(たゝ)き。偖(さて)こそ賊将(ぞくせう)の 中(うち)に幻術(げんじゆつ)を行(おこな)ふ者 有(あり)と覚(おぼへ)たり。昔(むかし)蜀(しよく)の孔明(かうめい)南蛮(なんばん)の孟獲(もうかく)を征伐(うち)し時(とき)敵(てき)幻術(げんじゆつ) を以(もつ)て雲中(うんちう)より魔軍(まぐん)を降(くだ)し蜀兵(しよくへい)を悩(なやま)せしとき。孔明(かうめい)其(その)邪術(じやじゆつ)なるを知(しり)獣類(じうるい)の 生血(せいけつ)をとりて魔軍(まぐん)に洒(そゝ)ぎかけしかば。幻術(げんじゆつ)破(やぶ)れて軍馬(ぐんば)と見えしは藁木偶(わらにんぎよ)なりしと かや。今も其理(そのり)にならひ。馬(むま)の血(ち)をとり器(うつわ)に入て。魔術(まじゆつ)を折(くじ)く用意(ようい)せよと下知(げぢ)せられ