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勢(せい)を探(さぐり)聞(きゝ)し上にて軍略(ぐんりやく)を定(さた)むべしとて。兵士(へいし)の中(うち)の国人(くにんど)を招寄(まねきよせ)山上(さんぜう)の地理(ちり)を問(と)
はれけるに。其者(そのもの)が曰(いはく)此岡(このおか)さのみ大山(たいさん)と申ほどにも候はねども。此方(こなた)より登(のぼり)候には路(みち)
狭(せま)く嶮(けはし)くして。然(しか)も檜(ひのき)多(おほ)く生(おひ)茂(しげ)り候へば。容易(ようい)には攻登(せめのほり)がたく候べし。只(たゞ)敵(てき)を釣(つり)
下(おろ)して伐(うち)給ふこそ然(しか)【注】るべく候はんとぞ申ける。田村丸(たむらまる)聞(きい)て。你(なんじ)がいふ所(ところ)理(ことは)りなれども。敵(てき)は
険阻(けんそ)を恃(たの)【特は誤記】みて屯(たむろ)すれば。釣下(つりおろ)すともよも下(くだ)るまじ。よし〳〵施(ほどこ)すべき手段(てだて)【叚は誤記】こそ有(あれ)
とて。急(きう)に攻登(せめのぼら)んともせず野陣(のぢん)【注】を張(はつ)て守禦(しゆぎよ)の備(そなへ)をなし。偖(さて)士卒(しそつ)を多(おほ)く出(いだ)し
て芦萱(あしかや)を数多(あまた)刈(かり)【苅は俗字】とらせ手頃(てごろ)に束(つがね)させて積(つみ)貯(たくは)へ。安閑(あんかん)として日を送(おく)りけるゆへ俊(しゆん)
哲(てつ)。真鷲(まわし)其意(そのい)をしらず。已(すで)に十日ばかりの日を歴(へ)ければ。堪(こらへ)かねて田村丸(たむらまる)に向(むか)ひ。そも
何(いづ)れの日か賊軍(ぞくぐん)を攻伐(かうばつ)すべきやと催促(さいそく)しけるに。田村丸 打(うち)わらひ。近日(きんじつ)山上(さんぜう)へ攻登(せめのぼり)
候べし。今(いま)暫(しばら)く待(まち)給へとて猶(なを)徒(いたづら)に打過(うちすぎ)また三 日(じつ)を送(おく)りけるに九月十九日の午(ひる)過(すぐ)る頃(ころ)
より西風(にしかぜ)吹出(ふきいだ)し日の暮(くる)るに従(したが)ひ《振り仮名:漸〱|しだい》に強(つよ)く吹(ふき)けるにぞ。田村丸 士卒(しそつ)に命(めい)じて積(つみ)貯(たくはへ)
【注 振り仮名は別本を参照す。】