Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 144

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多(おほ)く。しかも檜山(ひのきやま)なれば火(ひ)の燃(もえ)移(うつ)る事 早(はや)く荒吹(あらぶく)西風(にしかぜ)に吹立(ふきたて)られて暫時(ざんじ)が程(ほど)に半(はん) 山(ざん)の樹木(じゆもく)炎々(ゑん〳〵)と燃(もゆ)るにぞ。二百人の士卒(しそつ)は平場(ひらば)に寄集(よりあつま)り一 斉(せい)に喊(とき)を噇(どつ)と発(つくり)ける 此時(このとき)田村丸(たむらまる)が勢(せい)は坂(さか)を半(なかば)上(のぼ)りけるゆへ。山上(さんぜう)の火光(ひのて)と鯨波(ときこゑ)を相図(あひづ)とし同(おなじ)く大いに喊(とき)を 発(つく)り勇(いさ)み進(すゝ)んで攻登(せめのぼ)りければ。二 陣(ぢん)三 陣(ぢん)も是(これ)に機(き)を得(え)。先陣(せんぢん)に引続(ひきつゞい)て攻登(せめのぼ) りけり。賊方(ぞくがた)の陣(ぢん)には京軍(きやうぐん)久(ひさ)しく攻上(せめのぼ)らざるゆへ油断(ゆだん)を生(しやう)じ。今夜(こんや)押寄(おしよす)べしとは 思(おもひ)もよらぬ所(ところ)に。俄(にはか)に山中(さんちう)の樹木(じゆもく)燃立(もへたち)間近(まぢか)く喊(とき)の声(こゑ)の震(ふる)ひ起(おこ)るに仰天(げうてん)し須波(すは)や 敵軍(てきぐん)寄(よせ)たるぞ弓(ゆみ)よ太刀(たち)よと犇(ひしめ)きて騒動(そうどふ)鼎(かなへ)の粟(あわ)の沸(わく)がごとく。加之(しかのみ)ならず。檜(ひのき)の 燃立(もへたつ)事なれば梢(こずえ)より梢(こずえ)に火(ひ)伝(つた)ひ。火(ひ)の屑(こ)の落(おつ)る事 火(ひの)雨(あめ)の降(ふる)が如(ごと)くなれば。周障(しうせう) 狼狽(らうばい)して誰(たれ)か敵(てき)を支(さゝへ)んとする者なく我先(われさき)にと東(ひがし)の坂(さか)へぞ敗走(はいそう)しける。宦軍(くわんぐん)は火光(くはかう)を 力(ちから)に《振り仮名:追〱|おひ〳〵》山上(さんぜう)へ攻上(せめのぼ)り周障(あはて)迷(まよ)ふ賊軍(ぞくぐん)を追(おつ)かけ追詰(おつつめ)討(うつ)程(ほど)に。夷賊(いぞく)討(うた)るゝ者 数(かづ)知(しら) ず或(あるひ)は逃(にげ)んとして谷(たに)へ落(おち)重(かさな)りて死(し)する者も多(おほ)かりけり。大将(たいせう)悪路王(あくろわう)も心 駭(おどろ)きながら