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て帰館(きくわん)【舘は俗字】あり。普(あまね)く良材(りようざい)を買聚(かひあつめ)て音羽山(おとはやま)へ運送(うんそう)させ。財物(ざいもつ)を悋(をしま)ず百工(ひやくかう)をは励(はげま)して
堂塔(どうとふ)舞台(ぶたい)楼門(ろうもん)坊舎(ぼうしや)鎮守(ちんじゆ)の社殿(しやでん)にいたるまで。玉(たま)を磨(みが)きて巍々(ぎゝ)たる大伽藍(だいがらん)を
建立(こんりう)し。千手(せんじゆ)千眼(せんげん)の観世音(くわんぜおん)を本尊(ほんぞん)とし。地蔵尊(ぢざうそん)多聞天(たもんでん)を両脇士(りようわきし)として安置(あんち)せ
られ山上(さんぜう)より清浄(しやう〴〵)なる《振り仮名:飛泉|たき》 流(なが)れ落(おつ)るを以(もつ)て音羽山(おとはざん)清水寺(せいすいじ)と号(がう)し。延鎮(えんちん)を
以(もつ)て開基(かいき)とせられける。然(しか)ありしより以来(このかた)一千 有余年(ゆうよねん)の今にいたる迄(まで)堂塔(どうたふ)の壮麗(そうれい)
古(いにしへ)に変(かは)らず。法灯(ほふとう)永(なが)く無明(むみやう)の闇(やみ)を照(てら)し。利生(りせう)千古(せんこ)一 如(によ)にして。当寺(とうじ)の本尊(ほんぞん)に
祈誓(きせい)する人 御利益(ごりやく)を蒙(かふむ)らざるはなく。感応(かんのう)ある事 響(ひびき)の物(もの)に応(おふ)ずるが如(ごと)し。誠(まこと)
に観世音(くわんぜおん)大 慈(じ)大 悲(ひ)の誓(ちかひ)何(い▢[づ])れに疎(おろか)はなしといへども。殊(こと)に清水寺(せいすいじ)の観音薩垂(くわんおんさつた)
は霊験(れいげん)あらたなる本尊(ほんぞん)なれば。都鄙(とひ)の貴賎(きせん)歩(あゆみ)を運(はこぶ)事 日夜(にちや)絶間(たへま)はなかりけり
乾臨閣(けんりんかく)御遊(ぎよゆふ)緒継(をつぎ)昇進(しやうしん) 老人(らうじん)寿星(じゆせい)出現(しゆつげん)大赦(だいしや)事
星霜(せいさう)おし移(うつ)り延暦(えんりやく)二十一年 壬午年(みづのへむまどし)の六月。例(れい)よりは暑気(しよき)皓(はなは)だしかりければ桓武(くわんむ)