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天皇(てんわう)群臣(ぐんしん)を将(ひきい)て神泉苑(しんせんえん)に御幸(みゆき)在(ましま)し。納涼(すゞみ)の御遊(ぎよゆふ)を催(もよほ)され御 入興(じゆけう)あらせられけり
因(ちなみ)に曰(いふ)天子(てんし)の御 遊行(ゆふかう)を御幸(みゆき)と申は古(いにしへ)は君王(くんわう)御遊行(ごゆふかう)ある所(ところ)の人民(にんみん)にそれ〳〵
禄(ろく)を与(あた)へ賑(にぎ)はし給ふゆへ民(たみ)悦(よろこ)びて君王(くんわう)の光臨(くわうりん)し給ふを幸(さいはい)とするに基(もと)づき
て天子(てんし)の御出遊(ごしゆつゆふ)を御幸(ごかう)と唱(となへ)しより此称(このせう)始(はじま)れり。天子(てんし)の御 出遊(しゆつゆふ)を御幸(ごかう)と
書(かき)仙洞(せんとう)の御 出遊(しゆつゆふ)を行幸(ぎやうかう)と書(かく)。ともに和訓(わくん)にはみゆきと読(よめ)り
抑(そも〳〵)神泉苑(しんせんえん)と申は平安城(へいあんじやう)始(はじめ)て成就(じやうじゆ)せし時(とき)周(しう)の文王(ぶんわう)の霊囿(れいゆう)に准(なぞら)へて八 町(てう)四 方(はう)の
池(いけ)を堀築(ほりきづ)き池中(ちゝう)に社檀(しやだん)を営造(ゑいぞう)して八大 龍王(りうわう)を鎮(しづめ)祭(まつり)給ふ故(かるがゆへ)に旱魃(かんはつ)のとし
には神泉苑(しんせんえん)にて雨(あめ)を祈(いの)るに必(かなら)ず霊験(れいげん)あり。偖(さて)池辺(ちへん)に殿閣(でんかく)を建(たて)乾臨閣(けんりんかく)と号(がう)し
給へり。是(こ)は且(しばらく)おいて。帝(みかど)は諸臣下(しよしんか)を従(したがへ)て乾臨閣(けんりんかく)へ登(のぼ)らせ給ひ御遊宴(ごゆふえん)を催(もよほ)し給ひ
題(だい)を賜(たまは)りて公卿(くげう)に詩歌(しいか)を詠唫(えいぎん)させられ。其後(そのゝち)管絃(くわんげん)を催(もよほ)し給ひて。臣下(しんか)の中(うち)
に堪能(かんのふ)の人をえらび。それ〳〵の役(やく)を命(めい)じ給ふ。茲(こゝ)に藤原百川(ふぢはらのもゝかは)が男(なん)に従(じふ)四位下(しゐのげ)藤(ふぢ)