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思(おも)ひ出(いだ)され御 母(はゝ)藤原吉子(ふぢはらのよしこ)とともに。移(うつ)り変(かは)る世(よ)を恨(うら)み帝(みかど)の御 威光(いかう)を羨(うらや)く【ママ】妬(ねたみ)
母子(ぼし)とも心頭(しんとう)を燃(もや)されけるが。憤念(ふんねん)積(つも)りておぼろげならぬ大望(たいもう)も思(おも)ひ立(たち)給ひ帝(みかと)
を傾(かたむ)け奉(たてまつ)り。我(われ)万乗(ばんせう)の位(くらゐ)を践(ふま)はやと不軌(ふき)の企(くはだて)を心に生(しやう)ぜられけれども。大切(たいせつ)の義(ぎ)
成れば猥(みだ)りに口外(かうくわい)もし玉はず。其事(そのこと)となく時々(より〳〵)諸卿(しよけう)の心を引試(ひきため)して是彼(これかれ)と荷(か)
檐(たん)の人をかたらひ給ひける。其中(そのなか)に藤原宗成(ふぢはらのむねなり)といふ人あり。生得(しやうとく)多欲(たよく)にて他人(たにん)の
富貴(ふうき)を妬(ねた)み其身(そのみ)の威権(いけん)を隆(さか)んにせんとおもふ事 多年(たねん)なりしに。此頃(このころ)伊予親王(いよのしんわう)
の為体(ていたらく)。大事(だいじ)を思(おぼし)立(たつ)べき機(き)あるを察(さつ)し是(これ)究竟(くつけう)の事よと思(おも)ひ詐(わざ)と親(した)しく
親王(しんわう)の起居(ききよ)を訪(とふら)ひ進(まい)らせ。物語(ものがたり)の端(はし)には先帝(せんてい)の御代(ごよ)にはさしも時(とき)めき栄(さかへ)給ひしに
今の帝(みかど)の御代(みよ)となりて君(きみ)の御 威光(いかう)は漸々(しだい)に薄(うす)らぎ。伺候(しかう)する公卿(くげう)も稀々(まれ〳〵)に成(なり)
行(ゆき)候事の御 痛(いた)はしさよ。先帝(せんてい)は皇子(みこ)あまた御座在中(おはしますうち)にも。とり分(わけ)君(きみ)を御 寵愛(てうあい)
在(ましま)し。皇太子(かうたいし)にも立(たて)給ふべき叡慮(ゑいりよ)にておはしけるを内大臣(ないだいじん)冬継(ふゆつぐ)其身(そのみ)外戚(くわいせき)と