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成(なつ)て威(い)を震(ふるは)んと帝(みかど)を申 惑(まど)はし。我女(わがむすめ)の腹(はら)に出生(しゆせう)在(あり)し安殿親王(やすどのゝしんわう)を皇太子(かうたいし)に定(さだめ)
給へと勧(すゝ)め奉しゆへ帝(みかど)も冬継(ふゆつぐ)の詞(ことば)になづませ給ひ。安殿皇子(やすどのゝみこ)を儲君(まうけのきみ)となし給ひし也
先帝(せんてい)の睿慮(ゑいりよ)の侭(まゝ)ならず。君(きみ)こそ九五(きうご)の位(くらゐ)を践(ふそ)【ママ 「ふみ」とあるところか】給ひさこそ芽出度(めでたく)おはしますべ
きになんどゝ。御謀叛(ごむほん)を思(おぼし)立(たち)給へと言(いは)ぬばかりに申事 度々(どゝ)に及(および)ければ伊予親王(いよのしんわう)は
渡(わたり)に船(ふね)を得(え)たるごとく大いに悦(よろこ)び給ひ遂(つひ)に心術(しんじゆつ)を明(あか)し給ひて宗成(むねなり)と密謀(みつばう)を示(しめ)
し合(あは)し給ひ内々(ない〳〵)にて甲冑(かつちう)弓矢(ゆみや)を取寄(とりよせ)。忍々(しのび〳〵)に諸国(しよこく)の武士(ぶし)をかたらひ給ひけるに好(かう)
事(じ)門(もん)を出(いで)ず悪事(あくじ)千里(せんり)を走(はし)るならひ。早(はや)其(その)風説(とりさた)所々(しよ〳〵)に謳歌(いひふら)しけるを。右大臣(うだいじん)
内麻呂(うちまろ)洩(もれ)聞(きい)て是(これ)は一 大事(だいじ)の義(ぎ)かなとおど駭(おどろ)かれけれども。いまだ実否(じつふ)をも聞(きゝ)糺(たゞ)さずして
奏達(そうたつ)せんも如何(いかゞ)と。猶(なを)口外(かうぐわい)もせず世上(せじやう)の風聞(ふうぶん)を窺(うかゞ)はれけるに。内麻呂(うちまろ)の縁体(えんてい)なる
播磨国(はりまのくに)の武士(ぶし)何某(なにがし)。親王(しんわう)より味方(みかた)に頼(たの)み給ふよしを書(かき)たる宗成(むねなり)が密状(みつぜう)を持参(じさん)
して密(ひそか)に内麻呂(うちまろ)に呈(てい)しければ。偖(さて)は世上(せじやう)の風説(とりさた)疑(うたが)ふべきにあらずとて。急(きう)に参内(さんだい)