Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 172

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ならめと騒(さは)ぎ惑(まど)ひ。是(こ)は如何(いかゞ)せんと躊躇(ちうちよ)し玉ふうち。武士(ぶし)ども追々(おひ〳〵)こみ入 親王(しんわう)并(ならび)に 御 母(はゝ)吉子(よしこ)を虜(とりこ)にし。館(やかた)【舘は俗字】の男女(なんによ)も残(のこら)ず召捕(めしとり)有司(ゆうし)の庁(てう)へぞ曳(ひき)にける。斯(かく)て帝(みかど)は 群臣(ぐんしん)を召(めさ)れて御 詮議(せんぎ)あり。親王母子(しんわうおやこ)を川原寺(かはらでら)の一房(ひとま)に押籠(おしこめ)厳(きびし)く監卒(ばんにん)を 置(おい)て守(まも)らせ給ひ。偖(さて)藤原宗成(ふぢはらのむねなり)は逆意(ぎやくい)を勧(すゝ)めし大罪(だいざい)あれば。誅戮(ちうりく)させ給ふべ きなれども。先帝(せんてい)崩御(ほうぎよ)なし給ひていまだ幾程(いくほど)もあらざればとて。死罪(しざい)一等(いつとう)を宥(ゆるし) 佐渡国(さどのくに)へ流罪(るざい)にせられ。其余(そのほか)一 味(み)の輩(ともがら)も罪(つみ)の軽重(けいぢう)に従(したが)ひ流刑(るけい)または追放(ついほう)し 給ひけり。偖(さて)も親王母子(しんわうぼし)は密謀(みつばう)の露顕(ろけん)せしを恨(うら)み憤(いきどふ)り給ひ。倶(とも)に飲食(いんしい)を断(たち) 終(つい)に母子(ぼし)とも川原寺(かはらでら)にて餓死(がし)したまひける。噫(あゝ)愚(おろか)なるかな伊予親王(いよのしんわう)近(ちか)く早(さう) 良太子(らたいし)の例(ためし)を知(しり)もいながら人倫(じんりん)の道(みち)を弁(わきま)へず天の容(ゆるさ)ぬ王位(わうゐ)を望(のぞ)み。御 身(み)のみ ならず。母堂(ぼどう)を先(さき)とし親族(しんぞく)他人(たにん)にまで禍(わざはひ)を及(およぼ)し。不弟(ふてい)不義(ふぎ)の悪名(あくみやう)を遺(のこ)し千 載(ざい)の青史(せいし)を汚(けが)し給ふ事 自業自得(じがうじとく)とは言(いひ)ながら浅猿(あさま)しかりし事なりけり去程(さるほど)