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ければ玄吾(げんご)は宿(やど)を求(もとめ)んと急(いそ)ぐ折(をり)しもあれ忽(たちまち)山下(さんか)の茂林(もりん)の内(うち)より四五人の盗賊(とうぞく)顕(あらは)
れ出(いで)。玄吾を取囲(とりかこみ)て有無(うむ)をも言(いは)せず。理不尽(りふじん)に衣服(いふく)を剥取(はぎとり)路銀(ろぎん)をも奪(うばひ)
とり。赤裸(あかはだか)になして猶(なを)踏(ふん)づ蹴(け)つ打擲(てうちやく)し。何国(いづく)ともなく逃去(にげさり)ける。玄吾(げんご)は夢(ゆめ)に夢(ゆめ)
見し心地(こゝち)し。杖柱(つえはしら)とも憑(たのみ)し路銀(ろぎん)は一 銭(せん)も残(のこ)らず奪(うば)はれ。衣服(いふく)さへ引剝(ひきはが)れて犢(ふ)
鼻褌(どし)一ッと成(なり)。ひたと惘(あき)れ忙然(ぼうぜん)たりしが。夜嵐(よあらし)の身(み)にしむに付(つけ)心に思(おも)ひけるは
我(われ)都(みやこ)に親類(しんるい)縁者(えんじや)もなく。朋友(ほうゆう)知音(ちいん)もあらざるに。かく赤裸(あかはだか)になりて上(のぼ)るとも。乞(こつ)
食(じき)せんより外(ほか)にせんすべなし。なま中なる望(のぞみ)を発(おこ)し事(こと)茲(こゝ)に及(およ)べるは。身(み)の宿運(しゆくうん)の
尽(つき)しなるべし今は中(なか)〱(〳〵)世(よ)の人に恥(はぢ)【耻は俗字】を肆(さら)さんも朽惜(くちをし)。所詮(しよせん)此(この)湖水(みづうみ)に身(み)を沈(しづ)めて死(しな)
んものと。涙(なみだ)ながら仏名(ぶつめう)を唱え(となへ)つゝ合掌(てをあは)して湖(みづうみ)の中へざんぶとぞ飛込(とびこみ)ける。然(しかる)に玄吾(げんご)が
命数(めいすう)いまだ尽(つき)ざるにや。折(をり)よく一 艘(そう)の漁船(りようせん)漕来(こぎきた)り。人の捨身(みなげ)せしを見ると比(ひと)しく。其儘(そのまま)【侭は略字】
水中(すいちう)へ飛込(とびこみ)。玄吾(げんご)を右手(めて)の小脇(こわき)に抱(かゝ)へ立游(たちおよぎ)して我舟(わがふね)へかき上(あが)り。頓(やが)て玄吾(げんご)が水(みづ)を吐(はか)し