Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 193

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着(つき)けり。斯(かく)て小者(こもの)は船(ふね)を繋(つな)ぎ漁(れう)せし魚籠(うをかご)と網(あみ)とを携(たづさ)へ漁夫(れうし)は櫓(ろ)櫂(かい)をかたげ 玄吾(げんご)を伴(ともな)ひて。後戸(せど)を開(あけ)て我家(わがや)へ入に。女主(をんなあるじ)の見えざるは鰥夫(やもめ)なるべし。偖(さて)主翁(あるじ)は 小者(こもの)に命(めい)じて竈(かまど)の下を焚(たか)せ。其身(そのみ)は古(ふる)絮衣(ぬのこ)をとり出(いだ)して玄吾(げんご)に着(き)せ。囲炉裡(ゐろり) に柴(しば)打(うち)たきて倶(とも)に火(ひ)にあたり。偖(さて)も和殿(わどの)の生国(しやうこく)は何国(いづく)にて何(なに)のため京(きやう)へ上(のぼ)らるゝやと 問(とひ)ければ。玄吾(げんご)答(こたへ)て。我(われ)は加州(かしう)金沢(かなざは)の産(さん)にて浅山玄吾(あさやまげんご)と呼(よば)るゝ者にて候。先剋(せんこく)も 告(まうす)ごとく。若年(じやくねん)にて父母(ふぼ)は死去(みまかり)扁鄙(かたいなか)の住居(すまゐ)も懶(ものう)く。都(みやこ)へ上(のぼ)り何(なに)の芸(げい)なりとも 習(なら)ひ相応(さうおふ)の奉公(はうこう)をせんため。家宅(かたく)調度(てうど)を估却(うりはらひ)て路銀(ろぎん)とし。都(みやこ)を志(こゝろざ)して此国(このくに)ま で来(きた)り。計(はか)らず盗賊(とうぞく)に遭(あひ)て此(この)時宜(しぎ)に及(およ)び候と語(かたり)ける。主翁(あるじ)聞(きゝ)て其(それ)は難渋(なんじふ)なる 事ながらさのみ愁(うれひ)とせられな。見らるゝ如(ごと)く浅猿(あさまし)き漁夫(れうし)なれども。我(われ)も以前(いぜん)藤島(ふぢしま) 兵太(ひやうだ)とて武士(ぶし)の切米(きりまい)をも喰(はみ)し者なるが。主家(しゆか)退転(たいてん)の後(のち)は浪々(らう〳〵)して産業(たつき)なき儘(まゝ)【侭は略字】 此浦(このうら)へ来(きた)り漁(すなどり)を業(わざ)として露命(ろめい)を繋(つな)ぐうち。妻(さい)は四年(よとせ)以前(いぜん)に死去(みまかり)一人の女(むすめ)は