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を投(なげ)しを御 身(み)の親父(ちゝご)兵太(ひやうだ)殿(どの)に助(たす)け上(あげ)られ種々(いろ〳〵)教訓(きやうくん)の上(うへ)衣服(いふく)路銀(ろぎん)を借(かし)たま
はり猶(なを)【注】また有着(ありつき)の管媒(おんせわ)【𬋩は管の異体字】までに預(あづか)り当(この)寺中(じちう)普賢院(ふげんいん)へ住込(すみこみ)候なり。其節(そのせつ)一人の
息女(そくぢよ)を都(みやこ)へ奉公(はうこう)に出(いだ)せしと仰(あふせ)ありしが御 身(み)が恩人(おんじん)兵太(ひやうだ)殿(どの)の御 息女(そくちよ)にて候ひける
かや。然(しから)ば活命(くわつめい)の恩返(おんがへし)に此所(こゝ)を救(すく)ひ出(いだ)し進(まいら)する方便(てだて)もがなと。思惟(しあん)する間(ま)もなく
住僧(ぢうそう)為空(ゐくう)楼(にかい)へ上(のぼ)り来(きた)り。玄吾(げんご)を見て打(うち)駭(おどろ)きしが。又 面色(めんしよく)を和(やは)らげ。御辺(ごへん)は何用(なによう)有(あり)て
此楼(このろふ)へ上(のぼ)られしやと問(とふ)。玄吾(げんご)詞(ことば)を卑(さげ)。其事(そのこと)に候。今日(こんにち)主人(しゆじん)清真(せいしん)仏事(ぶつじ)に参(まい)られ。留守(るす)
中(ちう)徒然(とぜん)なる儘(まゝ)。【侭は略字】先日(せんじつ)の碁(ご)の勝負(しやうぶ)を仕(つかまつ)らんため。貴院(きいん)へ推参(すいさん)いたせしに。厨所(だいどころ)には見え
玉はず後園(つぼのうち)などに御坐(おはす)るやと尋(たづね)廻(まは)り。はからず此所(このところ)へ参(まい)りし無礼(ぶれい)の罪(つみ)は免(ゆる)し給へ
さるにてもかゝる風流(ふうりう)の御 楽(たのし)みを。今まで隠(かく)し給ひしぞ御 恨(うらみ)【眼は誤記】なれと戯事(たはふれごと)のやうに
言(いひ)けれども。為空(ゐくう)は答(いらへ)をもせず。先(まづ)此方(こなた)へ来(きた)り候へとて。玄吾(げんご)を伴(ともな)ひて楼(ろふ)を下(くだ)り一 室(しつ)の
内(うち)へ入しめて外(そと)より戸(と)を礑【噹は誤記】としめ。鎖(でう)をおろす音(おと)聞(きこ)えけるゆへ。玄吾(げんご)心中(しんちう)安(やす)からず。偖(さて)
【注 法政大学 国際日本学研究所、所蔵資料アーカイブス扶桑皇統記図会を参照】