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は松(まつ)が枝(え)が物語(ものがたり)のごとく。我(われ)をも逼(せま)り殺(ころ)さん巧(たく)みなるべし。始(はじめ)より斯(かく)としらば飛(とび)かう
て為空(ゐくう)を捉(とら)へ左(と)も右(かく)もせんずるものを。賺(すか)して此場(このば)を遁(のが)れ公庁(おゝやけ)に訴(うつた)へんと
思(おも)ひ手延(てのび)にして却(かへつ)て死穴(しけつ)に陥(おちいり)しとぞ悔(くや)しけれと。後悔(こうくわい)臍(ほぞ)を噛(かむ)【歯は誤記】ばかりなり。程(ほど)なく
為空(ゐくう)は覚浄(かくじやう)といへる同僚(どうれう)の悪僧(あくそう)を伴(ともな)ひ来(きた)り。鎖(でう)を開(あけ)て内(うち)に入 玄吾(げんご)を見て眼(まなこ)
を瞋(いから)し。你(なんじ)妄(みだり)に我徒(われ〳〵)が密遊(みつゆふ)の楼(ろう)へ上(のぼり)しは天命(てんめい)の尽(つく)る所(ところ)なり。今は覚期(かくご)して速(すみや)
かに自滅(じめつ)せよと詈(のゝし)り。懐中(くわいちう)より細索(ほそびき)と短刀(たんとう)と一 貼(てう)の毒薬(とくやく)とを出(いだ)して玄吾(げんご)が前(まへ)に
ならべ置(おき)。此(この)三品(みしな)の中(うち)你(なんし)が欲(ほつ)する品(しな)にて死(し)を急(いそげ)よ。もし猶予(ゆうよ)に及(およ)ばゝ我徒(われ〳〵)両人(りようにん)し
て縊(くび)り殺(ころ)すべしと言(いふ)尾(を)に付(つき)覚浄(かくじやう)も悪(にく)さげに疾々(とく〳〵)せよと急立(せきたて)けり玄吾(げんご)は恐怖(きやうふ)し
て騒(さは)ぐ心(むね)を押鎮(おししづ)め。是(こ)は日来(ひごろ)の御好意(こかうい)にも似(に)ざる仰(あふせ)かな下僕(やつかれ)は御 寺中(じちう)に住者(すむもの)に
て所謂(いはゆる)同(おな)じ穴(あな)の狐(きつね)に比(ひと)しければ。何(なん)ぞ和尚方(おせうがた)の密事(みつじ)を他(た)に洩(もら)し候べき。如何(いか)なる誓(せい)
詞(し)神文(しんもん)をも書(かき)候べし。此度(このたび)のみは一 命(めい)を助(たす)けたまへと。詞(ことば)を竭(つく)して謝(わび)頼(たのみ)けれども。為空(ゐくう)嘲(あざ)