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閉籠(とぢこめ)【篭は略字】おけば隠形(おんきやう)の術(じゆつ)を得(え)たりとも遁(のが)れ出(いで)ん事 能(あたふ)べからず今日(こんにち)死(し)せずんば明(みやう)
日(にち)。明日(みやうにち)死(し)せずんば明後日(めうごにち)。よも五日(いつか)とは過(すご)さじ。よし五日(いつか)を過(すご)しても死(しに)かねなば。其時(そのとき)
に我(われ)手(て)づから縊(くび)り殺(ころ)すべし。只(たゞ)暫(しばら)く渠(かれ)が自滅(じめつ)するを待(また)るべしと宥(なだ)めけるにより。両人(りやうにん)
もやう〳〵納得(なつとく)し。さらばとて三 僧(そう)とも外(そと)へ出(いで)。堅(かた)く鎖(でう)をおろして己(おの)が随意(じゝ)立別(たちわかれ)
ける。玄吾(げんご)は思(おも)ひもよらぬ大難(だいなん)に遭(あひ)。今は遁(のが)るゝに道(みち)なく。三 僧(そう)の隠悪(いんあく)を悪(にく)み憤(いきどふ)
り。我身(わがみ)の薄命(ふしあはせ)を悲(かなし)み胸(むね)を燃(もや)し腸(はらわた)を劈(つんざか)るゝ心地(こゝち)しながら今は助(たすか)るまじき命(いのち)な
れば死(し)して一 念(ねん)の怨鬼(ゑんき)となり三 僧(そう)を魅殺(とりころ)して此(この)仇(あだ)を報(ほう)ぜんものと心(むね)を定(さだ)め。そも
縊(くびれ)てや死(し)すべき刃(やいば)にや伏(ふす)べきと。索(なわ)をとり上 短刀(たんとう)を採(とつ)て見(み)千思万慮(せんしばんりよ)すれども更(さら)
に心(こゝろ)決(けつ)せず忙然(ぼうぜん)として途方(とはう)に昏(くれ)けり。然(しか)るに楼上(ろうせう)には松(まつ)が枝(え)玄吾(げんご)が寺僧(じそう)の為(ため)に
逼(せま)り殺(ころ)されん事を哀(あはれ)み。父(ちゝ)兵太(ひやうだ)がさしも慈善(じぜん)の心を以(もつ)て命(いのち)を助(たすけ)し者を。又 悲命(ひめい)の
死(し)をなす事の便(びん)なさよと心中(しんちう)に深(ふか)く嘆(なげき)しに。清真(せいしん)が宥(なた)めしに依(より)下(した)なる一室(ひとま)に押(おし)