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彼者(かのもの)自滅(じめつ)せしならめ。死骸(しがい)を埋(うづ)み隠(かくさ)んと楼(たかどの)の下(した)の室(しつ)にいたり。鎖(でう)をあけて立入(たちいり)見るに
豈(あに)はからん玄吾(げんご)の屍(しがい)は影(かげ)も見えざれば。三 僧(そう)とも愕然(がくぜん)として大いに駭(おどろ)き。斯(かく)鉄桶(てつとう)の如(ごと)
く堅固(けんご)に建(たて)し板屋(いたや)を如何(いかに)して抜出(ぬけいで)けんと評議(ひやうぎ)し所々(ところ〴〵)を見撿(みあらため)るに屋根際(やねぎは)の壁(かべ)を
人の潜(くゞ)るほど切破(きりやぶ)り有(あり)けるにぞ。偖(さて)は彼所(かしこ)より遁(のが)れ出(いで)しに疑(うたが)ひなし。先日(せんじつ)逼(せまつ)て縊(くび)り
殺(ころ)すべき奴(やつ)を清真(せいしん)の詞(ことば)によつて猶予(ゆうよ)し。捉逃(とりにが)せしぞ一 大事(だいじ)なれと足摺(あしずり)して悔(くや)めども
其(その)詮(せん)なし。為空(ゐくう)面色(めんしよく)如菜(あをざめ)。渠奴(きやつ)身(み)を全(まつた)うせば有司(ゆうし)の庁(てう)へ訟(うつたへ)るは治定(ぢでう)なり。我徒(われ〳〵)
僧法(そうほふ)を犯(おか)して隠妻(かくしづま)を養(やしな)ひ人を殺(ころ)せし事 露顕(ろけん)せば必(かならず)宦吏(やくにん)召捕(めしとり)に来(きた)るべし。噫(あゝ)
是(こ)はそも如何(いかに)すべきと。三人 面(おもて)を見合(みあは)し日来(ひごろ)は奸智(かんち)にたけたる悪僧(あくそう)們(ばら)も眉(まゆ)を焼(やく)の危(き)
急(きう)に及(およ)び。更(さら)に分別(ふんべつ)も出(いで)ず惘(あきれ)【忄+岡は誤記】果(はて)て痴人(ちじん)【癡は旧字】の如(ごと)し。清真(せいしん)よふ〳〵心(むね)を鎮(しづ)め今更(いまさら)過(すぎ)たる
事を千度(ちたび)悔(くひ)ても反(かへる)へきにあらず。二人の女は今宵(こよひ)他国(たこく)へ落(おと)しやりて身(み)を隠(かく)させ。我徒(われ〳〵)は雲(うん)
水(すい)修行(しゆげう)と言立(いひたて)暫(しばら)く影(かげ)を隠(かく)さんは如何(いかに)と言(いひ)ければ。為空(ゐくう)覚浄(かくじやう)実(げに)もと同意(どうい)し。先(まづ)