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けるゆへ大足(おほたり)貴者(たときもの)を将(つれ)て都(みやこ)へ上(のぼ)り大学(だいがく)に入しめ読書(とくしよ)を指南(しなん)するに。天性(てんせい)凡人(ぼんにん)
ならぬ奇童(きどう)なれば。一 度(ど)読(よめ)ば暗記(そらん)じ二 度(ど)読(よめ)ば理(り)に通(つう)じけるにぞ。大足(おほたり)も大に
感(かん)じ。我(われ)此児(このじ)に不及(およばざる)こと遠(とふ)しとぞ驚歎(きやうたん)しける。斯(かく)て貴者(たときもの)は大足(おほたり)の許(もと)に留学(りうがく)して
蛍雪(けいせつ)の功(かう)を積(つむ)こと三年。普(あまね)く諸経(しよけい)を学(まな)び究(きは)め。十五才の年 学士(がくし)浄成(きよなり)に随(したが)ひ
毛詩(もうし)尚書(せうじよ)易経(えきけう)等(とう)を学(まな)び。十八才にして又 岡田(おかだ)の博士(はかせ)に就(つい)て春秋左伝(しゆんじうさでん)を学(まな)
び。其余(そのよ)の書典(しよてん)渉猟(しやうれう)せざる隈(くま)もなく。皆(みな)其(その)深理(しんり)縕奥(うんおう)を究(きは)め。手跡(しゆせき)また無双(ぶそう)の
能書(のふじよ)なりければ。いまだ成童(せいどう)にして博学(はくかく)能書(のふじよ)の名(な)世(よ)に高(たか)し。然(しかれ)ども貴者(たときもの)儒道(じゆどう)
に心を留(とゞ)めず心中(しんちう)に想謂(おもへらく)。今まで学(まな)びたる典籍(てんせき)は只(たゞ)眼前(がんぜん)の理(り)のみにして一 期(ご)の
後(のち)の利(り)弼(ひつ)なし。不如(しかじ)誠(まこと)の福田(ふくでん)を求(もとめ)んにはとて。岩淵(いはぶち)の贈僧正(ぞうそうじやう)勒操(ろくそう)の弟子(でし)となり
て仏道(ぶつどう)を学(まな)び。切磋琢磨(せつさたくま)して大 虚空蔵(こくうざう)ならびに能満虚空蔵(のふまんこくうざう)の法(ほふ)を授(さづか)
りけり。此法(このほふ)は往昔(そのかみ)大 安寺(あんじ)の道慈(どうじ)律師(りつし)大唐(たいとう)に渡(わた)り諸法(しよほふ)を学(まなび)しときに。善(ぜん)