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无畏(むい)三 蔵(ざう)に逢(あひ)て其(その)奥旨(おうし)を授(さづ)かり。帰朝(きてう)の後(のち)大 安寺(あんじ)の善儀(ぜんぎ)に伝(つた)へ。善儀又 勒(ろく)
操(そう)に授けたる大 秘密(ひみつ)の法(ほふ)なり。去程(さるほど)に貴者(たときもの)法名(ほうめう)を无空(むくう)と改(あらた)め仏道(ぶつどう)修行(しゆぎやう)に
丹誠(たんせい)を凝(こら)し三教指帰(さんけうしき)といふ書(しよ)を編(あみ)延暦(えんりやく)十六年十二月 初(はじめ)の日 草稿(さうかう)成就(しやうじゆ)せり
其 文意(ぶんい)は俗(ぞくきやう)の益(えき)なき事を述(のべ)られし也。書の略(りやく)に曰(いゝく)【ママ】朝市(てうし)の栄花(えいぐわ)は念々(ねん〳〵)に是(これ)を
いとひ。巌薮(がんすう)の烟霞(ゑんか)は日夕(につせき)に是をねがふ。軽肥(けいひ)流水(りうすい)を見ては即(すなは)ち電幻(でんげん)の歎(なけ)き
忽(たちま)ちに起(おこ)り支離(しり)懸鶉(けんじゆん)を見ては則(すなは)ち因果(いんぐわ)のあはれ日毎(ひごと)に深(ふか)し。目(め)にふれて我(われ)
を勧(すゝ)む。誰(たれ)か風(ふう)を繋(つなが)む。茲(こゝ)に一多(いつた)の親戚(しんせき)あり我(われ)を縛(しば)るに五常(ごじやう)の索(なは)を以(もつ)てし我
を断(ことは)るに忠孝(ちうかう)に背(そむ)くといふを以てす。予(よ)思(おもへ)らく物(もの)の心一にあらず飛沈性(ひちんせい)皆(みな)異(こと)也
このゆへに聖者(しやうしや)の人を得(うる)に教網(きやうもう)に三 種(しゆ)あり。所謂(いはゆる)。釈(しやく)。李(り)。孔(かう)なり。浅深(せんしん)隔(へだて)有(あり)といへ
ども並(ならび)に皆(みな)聖説(せいせつ)なりもし一(ひとつ)の羅(あみ)に入(いり)なば。何(なん)ぞ忠孝に背かん《割書:云(しか)々》此書一 部(ふ)三 巻(ぐわん)
始(はじめ)は聾瞽(ろうこ)指帰と題(だい)せられしを。後に三教指帰と改(あらた)められたり。今も世(よ)に伝(つたは)り