Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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普(あまね)く緇素(しそ)賞覧(せうらん)せり。斯(かく)て无空は仏道修行のため普く山林(さんりん)難所(なんじよ)を渉(しやう) 覧(らん)して修練(しゆれん)の為(ため)に身命(しんみやう)を拋(なげう)たれければ。師(し)勒操(ろくそう)僧正(そうじやう)その苦行(くぎやう)をあはれみて 无空の十九才の年《割書:延暦|十二年》和泉(いづみの)国 槙尾山(まきのをざん)の中山西宝寺(なかやまさいほうじ)《割書:今は絶|たり》に於(おい)て剃髪(ていはつ)せし め沙弥(しやみ)の十 戒(かい)七十二の威儀(いぎ)を授(さづ)け法名を教海(きやうかい)と改めらる。後に又 如空(によくう)と称(しやう)せ られけり延暦十四年四月九日 東大寺(とうだいじ)に於て唐僧(とうそう)泰信(たいしん)律師(りつし)を伝戒(でんかい)の導師(どうし) とし勝伝(しやうでん)豊安(ほうあん)以下(いげ)とともに比丘(びく)の具足戒(ぐそくかい)を受(うく)。此時また名(な)を空海(くうかい)と改め らる是より戒珠(かいしゆ)を胸(むね)の間(あいだ)にかゝやかし。徳瓶(とくへい)を掌(たなごゝろ)の中(うち)に携(たづさ)へ。いよ〳〵俗塵(ぞくぢん)をいとひ 倍(ます〳〵)幽閑(ゆうかん)をしたひ。山より山に入 峯(みね)より峯にうつり練行(れんぎやう)日(ひ)を重(かさ)ね薫修(くんしゆ)年を 送(おく)り煙霞(ゑんか)を嘗(なめ)て飢(うえ)を忘(わす)れ鳥獣(てうじふ)に馴(なれ)て友(とも)とす。或時(あるとき)阿波(あはの)国 大滝(おほたき)の嶽(だけ)に 登(のぼ)り虚空蔵(こくざう)の法(ほふ)を修行(しゆぎやう)せられけるに忽(たちま)ち一 振(ふり)の宝剣(ほうけん)壇上(だんじやう)へ飛来(とびきた)りて虚空 蔵 菩薩(ぼさつ)の霊威(れいい)を顕(あらは)しける。件(くだん)の宝剣は大滝が獄【嶽】の不動(ふどう)の崛(いはや)に今 尚(なを)納(おさま)れり