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空海師(くうかいし)また不空(ふくう)三 蔵(ざう)の高徳(かうとく)を慕(した)ひ其(その)住所(ぢうしよ)へ尋(たづね)行(ゆき)て相見(しやうけん)せられければ不空(ふくう)
大いに怡(よろこ)び。我(われ)幼若(ようじやく)の昔(むかし)より仏門(ぶつもん)に入 普(あまね)く五 天竺(てんぢく)を経歴(けいれき)修行(しゆぎやう)し。此(この)唐土(とうど)へわたりて
法(ほふ)を弘(ひろ)め更(さら)に海(うみ)に泛(うか)んで日本(につほん)へ渡り弘法(ぐほふ)せんと欲(ほつ)すれども。期(とき)いまだ熟(じゆく)せず身(み)
已(すで)に老(おひ)たり。然(しかる)に你(なんじ)に逢(あふ)は我(わが)宿願(しゆくぐわん)の達(たつ)すべき時(とき)なり。依(よつ)て我(わが)訳(やく)せし華厳(けごん)六
波羅(はら)密教(みつきやう)および秘密(ひみつ)の経論(きやうろん)を授(さづ)くべし。我(われ)に交(かはり)て倭国(わこく)に法(ほふ)を弘(ひろ)めよと申
されけるにぞ。空海師(くうかいし)歓(よろこ)びに堪(たへ)ず即(すなは)ち止宿(ししゆく)して諸経(しよきやう)の秘訣(ひけつ)を悉(こと〴〵)く学究(まなびきはめ)幾(いく)
干(ばく)ならずして悉(こと〴〵)く其(その)玄旨(げんし)に通達(つうだつ)せられけり。不空(ふくう)其(その)俊才(しゆんさい)を深(ふか)く感賞(かんせう)し。南(なん)
天竺(てんぢく)龍猛菩薩(りうみやうぼさつ)より伝来(でんらい)せし三股杵(さんこしよ)及(およ)び諸(もろ〳〵)の経巻(きやうくわん)を尽(こと〴〵)く附属せられ
ける。空海師(くうかいし)大いに怡(よろこ)び拝受(はいじゆ)して恩(おん)を謝(しや)し。辞(いとま)を告(つげ)て旧(もと)の西明寺(さいみやうじ)の故院(こいん)へ帰(かへ)
り住(すま)れけるに。唐(とう)の帝(みかど)憲宗皇帝(けんそうくわうてい)空海師(くうかいし)の博才(はくさい)法徳(ほふとく)を睿聞(ゑいぶん)あつて宮(きう)
中(ちう)へ召(めさ)れ。諸経(しよけう)の文義(ぶんぎ)を問(とひ)給ふに。空海師(くうかいし)悉(こと〴〵)く言下(ごんか)に答(こたへ)らるゝ事 響(ひゞき)の物(もの)