Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 238

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応(おう)天門の方へ行(ゆか)れけるにぞ。諸弟子達(しよでしたち)不審(ふしん)し。梯子(はしご)などかけて点(てん)を加(くは)へ給ふにや と後(あと)に従(したが)ひ行(ゆき)て見るに空海和尚(くうかいおしやう)は従容(じふよふ)として門の辺(ほとり)へ立寄(たちより)給ひ筆(ふで)を執(とつ)て墨(すみ) を含(ふくま)せ。高(たか)く門上(もんじやう)の額(がく)を臨(のぞ)んで筆(ふで)を擲(なげう)ち給ひけるに。毫釐(がうり)も狂(くる)はず応(おう)の字(じ) の上(うへ)に円点(ゑんてん)を墨黒(すみぐろ)に打(うち)筆(ふで)は其儘(そのまゝ)【侭は略字】下へ落(おち)。いとゞ筆勢(ひつせい)ぞ加(くは)はりける。是(これ)を見物(けんぶつ)せ し弟子達(でしたち)其余(そのよ)の諸人あつと計(ばかり)に感嘆(かんたん)し。実(げに)も不思議(ふしぎ)の名僧(めいそう)かなとぞ賞(せう)し ける。此義(このぎ)睿聞(ゑいぶん)に達(たつ)し。今に始(はじめ)ぬ空海(くうかい)が神(しん)筆かなと深(ふか)く睿感(ゑいかん)在(ましま)し。即(すなは)ち宮(きう) 中へ召(めさ)れ御 賞美(せうび)の上 多(おほ)くの被物(かづけもの)を給(たま)はりけり。後(こう)代まで弘法(かうぼふ)の投(なげ)筆と称(しやう)するは 此事なり。和漢(わかん)両朝(りやうてう)に能(のふ)書 多(おほ)しといへども。空海和尚(くうかいおしやう)のごとく五(ご)筆を揮(ふる)ひて一 時(じ)に 五行(ごぎやう)の書(しよ)をなし。或(あるひ)は水面(すいめん)に詩(し)を書(しよ)し。今また筆(ふで)を投(なげ)て点(てん)を加(くはゆ)る等(とう)の奇(き)事は 前代未聞(ぜんだいみもん)と謂(いひつ)べし。後代(こうだい)にいたりて紀百枝(きのももえ)といふ人 空海和尚(くうかいおしやう)の書給ひし皇嘉(くわうか) 門の額(がく)を見て。其(その)筆法(ひつほふ)力士(りきし)の跋扈(ふんばたかる)に似(に)たりと誹謗(ひはう)しければ。其夜の夢(ゆめ)に二三 頭(とう)