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て都(みやこ)へ帰(かへ)り参内(さんだい)して在(あり)し次第(しだい)を奏(そう)し額(がく)を睿覧(ゑいらん)に備(そなへ)ければ。帝(みかど)御驚嘆(ごきやうたん)ま
し〳〵先達(さきだつ)ての投筆(なげふで)といひ今度(こんど)また谷川(たにがは)を隔(へだて)て書(しよ)を揮(ふるふ)事 更(さら)に凡夫(ぼふぶ)の及(およ)ぶ所(ところ)
にあらず。実(じつ)に仏(ぶつ)菩薩(ぼさつ)の再誕(さいたん)ありしなるべしと。弥(いよ〳〵)御 信仰(しんかう)を増(まし)給ひける。斯(かく)て
真綱(まづな)は件(くだん)の額(がく)を再(ふたゝ)び高雄寺(たかをでら)へ持参(じさん)して寄付(きふ)しけり《割書:今猶右の額高雄寺の宝|蔵に秘置什宝の第一とせり》
去程(さるほど)に空海和尚(くうかいおせう)は高雄寺(たかをでら)に於(おい)て諸弟子(しよでし)を教導(をしへみちび)き給ふ程(ほど)に各(おの〳〵)稍(やゝ)金胎両(こんたいりよう)
部(ぶ)の深理(しんり)に達(たつ)せられければ。今は天下に真言宗(しんごんしう)を弘通(ぐづう)せんと弘仁(かうにん)元年《割書:三十|七才》の春(はる)参(さん)
内(だい)ありて真言宗(しんごんしう)流通(るつう)の義(ぎ)を願(ねが)ひ。即身成仏(そくしんじやうぶつ)の理(り)を奏聞(そうもん)し給ひければ。帝(みかど)其(その)法(ほふ)
を尊(たつと)び給ひながら猶(なを)も諸宗(しよしう)の高僧(かうそう)を召集(めしあつ)め給ひ。空海(くうかい)が願(ねがふ)ところの真言密(しんごんみつ)
乗(ぜう)の宗派(しうは)の義(ぎ)可否(かひ)如何(いか)有べきと勅問(ちよくもん)せさせ給ふ。是(これ)に依(よつ)て諸宗(しよしう)の碩徳達(せきとくたち)清(せい)
涼殿(りようでん)に居流(ゐながれ)て空海和尚(くうかいおしやう)一人を対人(あひて)にとり。抑(そも〳〵)欽明(きんめい)天皇の御宇(ぎよう)に仏教(ぶつきやう)初(はしめ)て我朝(わがてう)
に渡(わた)り。聖徳太子(しやうとくたいし)隆(さか)んに仏法(ぶつほふ)を弘通(ぐつう)し給ひしより以来(このかた)代々(よゝ)の賢哲(けんてつ)入唐(につとう)渡天(とてん)