← 前のページ
ページ 243 / 521
次のページ →
翻刻
し各(おの〳〵)仏法(ぶつほふ)の真理(しんり)を学(まなび)究(きは)め七 宗(しう)の行果(ぎやうくわ)を本朝(ほんてう)に伝(つた)ふといへども。未(いま)だ即身成仏(そくしんじやうぶつ)
の法(ほふ)を説(とき)しを聞ずと銘々(めい〳〵)学力(がくりき)を尽(つく)し弁舌(べんぜつ)浪(なみ)を起(おこし)論難(ろんなん)刃(やいば)を研(とぎ)て法論(ほふろん)しけるに
空海和尚(くうかいおせう)少(すこ)しも屈(くつ)し玉はず。一々 其(その)難問(なんもん)を言解(いひほどき)給ふ事 詞義(しぎ)明(あきらか)にて弁舌(べんぜつ)懸河(けんが)の
の【衍】ごとく一 言(ごん)半句(はんく)も滞(とゞこふ)りなければ。満座(まんざ)の衆僧(しゆうそう)理(り)に圧(おさ)れて口(くち)を憩(つぐ)み玉簾(ぎよくれん)の
内(うち)に睿聞(ゑいぶん)在(ましま)す帝(みかど)を首(はじめ)奉り並居(なみゐ)る月卿雲客(げつけいうんかく)まで空海和尚(くうかいおせう)の博識(はくしき)名(めい)
弁(べん)を感嘆(かんたん)し満殿(まんでん)少(しば)し寂寥(ひつそ)と静(しづ)まりける。時(とき)に空海和尚(くうかいおせう)は南方(なんはう)に向(むか)ひて契(けい)
印(いん)を結(むすび)真言(しんごん)を誦(じゆ)して秘観(ひくわん)を凝(こら)し給へば肉身(にくしん)忽(たちま)ち毘盧遮那仏(びるしやなぶつ)の尊容(そんよう)と
変(へん)じて八 葉(よう)の白蓮(びやくれん)の上に坐(ざ)し給ひ白毫(びやくがう)より赫(かく)〱(〳〵)たる光明(かうみやう)を放(はな)し給ふにぞ殿(でん)
中(ちう)さながら▢▢(はり)【玉+波・玉+梨】の妙界(めうかい)のごとく光(ひかり)輝(かゝや)き名香(めいかう)復郁(ふくいく)【馥とあるところ】と薫(くん)じわたりけるゆへ数多(あまた)の
僧綱(そうこう)大いに駭(おどろ)き各(おの〳〵)陛下(かいか)へ走(はし)り下(くだ)り。首(かうべ)を低(たれ)身(み)を平伏(ひれふし)て敬礼(けうらい)し。帝(みかど)を先とし奉り
並居(なみゐ)る諸卿(しよけう)も思(おも)はず合掌(がつせう)礼拝(らいはい)ありける。少時(しばらく)ありて空海和尚(くうかいおせう)結(むすび)し印(いん)を