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を消(けし)種々(さま〴〵)に追払(おひはら)へども却(かへつ)て其(その)徒(ともがら)に逆(さか)ひて螫(さし)ける程(ほど)に。もてあまして逃(にげ)
退(しりぞ)き。家(いへ)に引籠(ひきこも)【篭は略字】り昼(ひる)は出(いづ)る事なく夜(よる)のみ出(いで)て諸用(しよよう)を弁(べん)じけるに。後(のち)に
は家々(いへ〳〵)に乱(みだ)れ入(いり)て螫(さし)けるゆへ。今は蜂(はち)を防(ふせ)ぐべき術(じゆつ)なく僧俗(そうぞく)とも寺中(じちう)を
逃去(にげさつ)【迯は俗字】て他所(たしよ)に移住(うつりすみ)。邂逅(たまさか)じ寺法(じほふ)を守(まも)る僧(そう)は命(いのち)を拋(なげうつ)て残(のこ)り留(とゞ)まるといへ
ども。それさへ蜂の害(がい)を防(ふせ)ぎかね学業(がくぎやう)漸(よふや)く癈(すた)れて法脈(ほふみやく)まさに絶(たへ)なん
としけるにぞ。皆(みな)此寺(このてら)衰滅(すいめつ)すべき大 魔縁(まえん)なりと歎(なげ)きあへり。帝(みかど)其(その)由(よし)を聞(きこ)
召(しめし)て宸襟(しんきん)安(やす)からず。空海和尚(くうかいおせう)を召(めさ)れて。你(なんじ)東大寺(とうだいじ)に移(うつ)り住(すみ)て悪虫(あくちう)の
災害(わざはひ)を退(しりぞ)け候へとて。即(すなは)ち東大寺(とうだいじ)の別当(べつとう)に任(にん)じ給ひけり。是(これ)に依(よつ)て空海和(くうかいお)
尚(せう)東大寺(とうだいじ)にいたりて住(すみ)給ひければ。不思議(ふしぎ)なるかなさしも夥(おびたゝ)しく群(むらが)り出(いで)し
大 蜂(ばち)一 疋(ひき)も出(いづ)る事なく。蜂(はち)の禍(わざは)ひ忽(たちま)ちに止(やみ)けるにぞ。諸人(しよにん)奇異(きい)の思(おも)ひをな
し。是(これ)ひとへに空海和尚(くうかいおせう)の法威(ほふい)によるところなりと感(かん)じ退散(たいさん)せし僧俗(そうぞく)