Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 256

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是(これ)より空海和尚(くうかいおせう)は一時(あるとき)は高雄(たかを)に住(ぢう)し。一時(あるとき)は高野山(かうやさん)に行(おこな)ひ。一時(あるとき)は東寺(とうじ)に在(いまし)て。弟子(でし) を導(みちび)き衆生(しゆぜう)を化益(けやく)し給ひけり。是(こ)【別本による】は且(しばら)くおいて空海和尚(くうかいおせう)と同時に西寺(さいじ)を給(たま)はりたる 守敏僧都(しゆびんそうづ)も法力(ほふりき)勝(すぐ)れし知識(ちしき)なりければ。嵯峨天皇(さがてんわう)常(つね)に宮中(きうちう)へ召(めさ)れ経論(けうろん)を講(かう) ぜさせて御聴聞(ごてうもん)遊(あそば)され空海和尚(くうかいおせう)に劣(おとら)ず御 皈依(きえ)在(あり)けるが一時(あるとき)御手(おんて)を浄(きよめ)給はん とて湯(ゆ)を召(め)させ給ひしに殊(こと)の外(ほか)の沸湯(ふつたう)にて余(あま)り熱(あつ)かりければ。御 手(て)をさし兼(かね)給ふ 折(をり)しも。守敏僧都(しゆびんそうづ)参内(さんだい)して御前(ごぜん)に居合(ゐあは)され此体(このてい)を見て袖(そで)の中(うち)に灑水(しやすい)の印(いん)を結(むすば) れけるにぞ。さしもの熱湯(あつゆ)忽(たちま)ち冷水(れいすい)となりける。帝(みかど)駭(おどろ)かせ給ひ。是(こ)は何(いか)なるゆへぞと 御 不審(ふしん)ありける時(とき)守敏(しゆびん)完示(につこ)【ママ 注】とわらひ。御 湯(ゆ)のあまりに熱(あつ)く見えさせ給ひしゆへ拙(せつ) 僧(そう)水印(すいいん)を以(もつ)て冷(ひや)し奉り候なりと奏(そう)せられける。帝(みかど)大いに感(かん)じ給ひ法力(ほふりき)の勝(すぐれ)たるを 御 賞美(せうび)在(ましま)しけり。其後(そのゝち)また一時(あるとき)守敏(しゆびん)参内(さんだい)せられけるに。時(とき)しも極寒(ごくかん)の節(せつ)にて 其日(そのひ)は殊更(ことさら)寒気(かんき)厳(きび)しかりければ。御 火鉢(ひばち)を多(おほ)く召寄(めしよせ)給ひ御座(ござ)の四隅(よすみ)に置(おか)せ 【注 「莞爾」或は「莞尓」とあるところ】