Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

- 翻刻

 - ページ 260

ページ: 260

翻刻

て朝政(てうせい)を聴(きく)に懶(ものう)し。依(よつ)て帝位(ていゐ)を太子(たいし)に譲(ゆづら)んと思(おも)へり。卿(なんじ)よろしく譲位(じやうゐ)の義(ぎ)を執(とり) はからひ候へと宣(のたま)ひければ。冬嗣公(ふゆつぐこう)謹(つゝし)んで奉(うけたま)はり給ひ古(いにしへ)より聖人(せいじん)は聖人(せいじん)を知(しる)と申せり 今 陛下(へいか)仁徳(じんとく)唐尭(とうげう)にも優(まさ)らせ給ひ。皇太子(くわうたいし)大伴親王(おほともしんわう)また虞舜(ぐしゆん)の聖徳(せいとく)にもおさ 〳〵劣(おとり)玉はざれば万機(ばんき)の政務(まつりごと)を付託(ふだく)させ給ふ事 誠(まこと)に天(あめ)が下(した)の慶幸(よろこび)何事(なにごと)か是(これ)に過(すぎ)候 べき然(しかれ)ども近年(きんねん)諸国(しよこく)凶作(けうさく)続(つゞ)き万民(ばんみん)飢餓(きが)の患(うれひ)に苦(くるし)み候 時節(じせつ)にて候へば。上皇(じやうかう)《割書:平|城》 在(ましま)す上(うへ)に君(きみ)また太上天皇(だじやうてんわう)とならせ玉はゞ。恐(おそ)らくは士民(しみん)の貢物(みつぎもの)嵩(かさみ)て民(たみ)の歎(なげ)きとや成(なり) 候べき。俯(ふし)て願(ねがは)くは今 暫(しばら)く年(とし)の豊熟(ほうじゆく)するを待(また)せ給ひて後(のち)御 譲位(しやうゐ)なし給はゞ万(ばん) 民(みん)の大幸(たいかう)たるべく候。素(もとよ)りいまだ御 衰老(すいらう)と申御 齢(よはひ)にてもわたらせ玉はねば。御 譲位(じやうゐ) の御事さのみ晩(おそ)しと申にても候まじと啓奏(けいそう)ありけるを。帝(みかど)聞召(きこしめし)卿(なんじ)が諫(いさめ)も一 理(り)有(あり)と いへども。太子(たいし)の賢明(けんめい)朕(ちん)にはるか勝(まさ)れば。帝位(ていゐ)を伝(つたふ)るは万民(ばんみん)の為(ため)をおもふゆへなり。近年(きんねん)五(ご) 穀(こく)不熟(ふじゆく)なるは朕(ちん)が徳(とく)の薄(うす)きゆへなれば。太子(たいし)位(くらゐ)に即(つか)ば年(とし)豊饒(ぶねう)に皈(き)すべし朕(ちん)が心