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廷(てい)へ奏聞(そうもん)し遂(つひ)に荼毘(だび)の煙(けふり)とぞなしける。是(これ)より西寺(さいじ)は漸々(しだい)に衰微(すいび)し東寺(とうじ)は追々(おひ〳〵)
繁栄(はんえい)して末代(まつだい)の今まで堂塔(どうとふ)巍々然(ぎゝぜん)たるは全(まつた)く空海和尚(くうかいおせう)の法徳(ほふとく)による所(ところ)なり
其後(そのゝち)空海和尚(くうかいおせう)は和州(わしふ)室生山(むろふざん)を先(さき)とし東国(とうごく)北国(ほくこく)南海(なんかい)四国(しこく)九州(きうしう)の津々浦々(つゝうら〳〵)まで
経歴(けいれき)して霊場(れいぢよう)を開(ひら)き給ひ。人の通(かよ)はぬ深山(しんざん)高山(かうざん)の道(みち)を通(つう)じ。渉(わたり)がたき大河(たいが)には橋(はし)
を掛(かけ)水脈(みづのて)あしき田畑(でんばた)には水を引(ひき)専(もつは)ら万民(ばんみん)の助(たすけ)をなし給ひけるゆへ。諸国(しよこく)の人民(にんみん)倍(ます〳〵)皈(き)
依(え)し空海和尚(くうかいおせう)の御 加持(かじ)を受(うく)る者(もの)は。躄(いざり)も起(たち)聾(みゝしい)も聞(きこ)え瘖(おし)も能(よく)言(いひ)盲(めしい)も目(め)を
明(あき)年(とし)旧(ふる)き難病(なんびやう)業病(がうびやう)も治(ぢ)せざるはなし。生霊(せいれい)すら如此(かくのごとく)なれば増(まし)て況(いはん)や九泉(よみぢ)の
下(した)に迷(まよ)ふ亡霊(ぼうれい)の成仏(じやうぶつ)得脱(とくだつ)する事は推(おし)て知(しる)べし真(まこと)に奇代(きたい)の知識(ちしき)にてぞ在(おは)しける
母公(はゝぎみ)阿刀氏(あとし)《振り仮名:望_レ登_二高野山_一|かうやさんへのぼらんとのぞむ》 山中(さんちう)怪異(けい)慈尊院(じそんいん)之(の)条(こと)
空海和尚(くうかいおせう)一年(あるとし)高野山(かうやさん)に御 在中(ざいぢう)の時(とき)御 母(はゝ)阿刀氏(あとし)久(ひさ)しく師(し)に御 対面(たいめん)なきを以(もつ)
て恋(こひ)しく思召(おぼしめし)久々(ひさ〴〵)の御 向顔(かうがん)なさまほしく。又は名(な)に高(たか)き高野山(かうやさん)の堂塔(どうとふ)をも