Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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十の長(おさ)にて齢(よはい)万年(まんねん)を保(たもつ)といひ。いとも芽出度(めでたき)ものなるに。僅(わづか)の餌(えば)を貪(むさぼ)りて鉤(つり)【鈎は俗字】にかゝりしぞ 便(びん)なかれ自余(じよ)の者(もの)の針(はり)にかゝらば。あたら命(いのち)をやとられなん。我(われ)は漁(すなどり)を業(ぎやう)とすれどもさる残(ざん) 忍(にん)なる事を好(この)まず。放(はな)ち還(かへ)らしめんあいだ。此後(このゝち)敢(あへ)て鉤(つり)【鈎は俗字】の餌(えば)を喰(くらふ)こと勿(なか)れと言聞(いひきか)せ。針(はり) を離(はな)して海中(かいちう)へ放(はな)ちやりければ。亀(かめ)は其(その)恩(おん)をや感(かん)じけん。二三 度(ど)浮(うか)み出(いで)て浦島(うらしま)を顧(かへり)み 其後(そのゝち)海底(かいてい)へ沈(しづ)みけり。浦島(うらしま)はそれより常(つね)のごとく魚(うを)を鉤(つり)【鈎は俗字】夕暮(ゆふぐれ)の比(ころ)我家(わがや)へ帰(かへり)けるに 夜半(やはん)の比(ころ)戸(と)を打叩(うちたゝ)く者(もの)あり。誰(た)そやと応(いらへ)て戸(と)を開(ひら)けば一人の女(によし)入来(いりきた)りける浦島(うらしま)瞳(ひとみ) を定(さだめ)てつら〳〵見るに容色(ようしよく)美麗(びれい)なる事たとふるに者(もの)なく身(み)に見も馴(なれ)ぬ羅綾(らりよう)の 衣服(いふく)を着(ちやく)しさながら描(ゑがけ)る天人(てんにん)のごとくなるが浦島(うらしま)を拝(はい)して礼(れい)をなし。妾(わらは)は此国(このくに)の側(かたはら)に 住者(すむもの)の女(むすめ)にて候が。いまだ夫(をつと)に嫁(とつが)ず。然(しかる)に世(よ)の人の噂(うはさ)に水江(みづえ)の浦島(うらしま)某(なにがし)こそ正路(しやうろ)を 守(まも)り隠徳(いんとく)を好(この)む善人(ぜんにん)なりといへるを以(もつ)て妾(わらは)が父母(ちゝはゝ)御 身(み)を婿がねにせまほしく思(おも) ひ妾(わらは)に命(めい)して御 身(み)を迎(むか)へさせ給ふなり依(よつ)て今宵(こよひ)御 迎(むかへ)にまいりぬ願(ねがは)くは妾(わらは)と伴(とも)に