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なして両人(りようにん)を慰(なぐさ)めけるゆへ。二人は遊興(ゆうけう)に余年(よねん)を忘(わす)れ思(おも)はず半年(はんねん)ばかり逗留(たうりう)
しけるに常(つね)に三月 比(ごろ)のごとく更(さらに)寒(さむ)からず暑(あつ)からず。また哀愁(かなしみうれふ)る事もなく恐懼(おそれおどろく)事
もなし。然(しかる)に一時(あるとき)両人とも故郷(こけう)の親(おや)兄弟(きやうだい)の待(まち)わびん事をおもひ一度(ひとたび)故里(ふるさと)へ帰(かへ)り
たきよし望(のぞみ)けるに。二女が曰(いはく)君等(きみたち)前世(ぜんせ)の冥福(みやうふく)に因(よつ)てかゝる仙竟(せんけう)へ来(きた)る事を得(え)給ふは
再(また)なき幸福(さいはひ)なり故郷(ふるさと)の事を思(おも)はず永(なが)く這里(このところ)に居(ゐ)給へと詞(ことば)を竭(つく)して抑留(おさへとゞめ)けれ
ども。両人(りようにん)は頻(しきり)に故郷(こけう)恋(こひ)しくおもひ。強(しい)て辞(いとま)を乞(こひ)けるゆへ。二女(にぢよ)歎息(たんそく)し公等(きみたち)未(いま)
だ塵世(ぢんせ)の俗(ぞく)根滅(こんめつ)せず再(ふたゝ)び汚濁(おぢよく)の人間界(にんげんかい)へ帰(かへら)ん事を欲(ほつ)するは為方(せんかた)なしとて
よふ〳〵に承諾(せうだく)し。諸(もろ〳〵)の仙女(せんぢよ)を呼(よび)集(あつめ)て大いに酒宴(しゆえん)をなし。別(わかれの)杯(さかづき)を汲(くみ)かはし音楽(おんがく)歌(か)
舞(ぶ)をなして後(のち)。二人を門外(もんぐわい)へ送(おく)り出(いだ)し帰(かへ)るべき路(みち)を精(くはし)く教示(をしへしめ)しけるゆへ両人 悦(よろこ)び
教(をしへ)のごとく行(ゆく)に果(はた)して常(つね)に通(かよ)ひし路(みち)へ出(いで)己々(おのれ〳〵)が家路(いへぢ)へ帰(かへり)見るに。家(いへ)のさま有(あり)しに
は違(たが)ひ。万事(ばんじ)目馴(めなれ)ぬ事(こと)のみなれば。不審(いぶかり)ながら我家(わがや)とおもふ屋(いへ)へ立入(たちいり)見るに不知(しらぬ)人(ひと)