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御 髪(かざり)をおろし出家(しゆつけ)し給ひ法諱(のりのいみな)を恒寂(かうじやく)と名乗(なのり)給ひけり。世(よ)の転変(てんべん)は常(つね)
の事ながら痛(いた)はしかりし御事なりけり。偖(さて)また橘逸勢(たちばなのはやなり)は隠謀(いんばう)露顕(ろけん)の事を
深(ふか)く憤(いきどふ)り。配所(はいしよ)へ謫(てき)せられても憤念(ふんねん)猶(なを)止(やま)ず。終(つひ)に配所(はいしよ)にて病死(びやうし)しけるが。その
悪霊(あくれう)都(みやこ)に現(あら)はれ種々(さま〴〵)祟(たゝり)【崇は誤】をなし貴賎(きせん)を悩(なやま)しけるゆへ御霊八社(ごれうはつしや)の中(うち)の神(かみ)に
鎮祭(しづめまつ)り給ひける。是(これ)に依(よつ)て其(その)祟(たゝり)【崇は誤】も鎮(しづま)りけり
《振り仮名:従_二豊後国_一献_二白亀_一|ぶんごのくによりはくきをけんず》 良岑宗貞(よしみねのむねさだ)詠歌(えいか)遁世(とんせい)条
承和(しやうわ)十二年 乙丑(きのとうし)に文章博士(もんじやうのはかせ)参議(さんぎ)菅原是善(すがはらのこれよし)卿(けう)の北堂(きたのかた)男子(なんし)を生(うみ)給ひける幼(よう)
名(みやう)を三(さん)と号(なづけ)また阿子(あこ)とも呼(よび)給ひけり。後(のち)に菅原道真(すがはらのみちざね)公(こう)と申は是(これ)なり。御一代の
御事は次(つぎ)の巻(まき)に委(くはし)く記(しる)せば茲(こゝ)に略(りやく)す。同(おなしく)十五年 戊辰(つちのへたつ)の六月 豊後国(ぶんごのくに)より白(しろき)
亀(かめ)を献(けん)じければ。帝(みかど)御感(ぎよかん)浅(あさ)からず。それ亀(かめ)は四 霊(れい)の一ツにて万年(まんねん)の寿(じゆ)を保(たも)つ目(め)
出度(でたき)ものなれば。元正(げんしやう)天皇の霊亀(れいき)の年号(ねんがう)を始(はじめ)とし聖武(しやうむ)天皇の神亀(しんき)光仁(かうにん)天皇