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静子(しづこ)と申せり。第(だい)二第三は姫宮(ひめみや)にて第(だい)四の皇子(みこ)を維仁親王(これひとしんわう)と申奉り御 母(はゝ)は大
政大臣(じやうだいじん)藤原良房(ふぢはらのよしふさ)公(こう)の御 女(むすめ)明子(あきこ)と申 即(すなは)ち文徳帝(もんどくてい)の后(きさき)に立(たゝ)せ給ふ。後(のち)に染殿(そめどの)の
后宮(こうぐう)と申は此后(このきさき)なり。時に第(だい)一の皇子(わうじ)維高親王(これたかしんわう)は天 性(せい)温順(おんじゆん)柔和(にうわ)にて。且(かつ)又 聡明(そうめい)
睿敏(ゑいびん)に在(ましま)しければ。帝(みかど)の御 寵愛(てうあい)他(た)に勝(まさ)り。此(この)皇子(みこ)を春宮(とうぐう)に立(たて)まほしく思召(おぼしめし)け
るに。紀名虎(きのなとら)また我孫(わがまご)の事なれば一の宮(みや)を太子(たいし)に立(たて)給へと頻(しきり)に内奏(ないそう)しけるにより。帝(みかど)は
いよ〳〵御心(みこゝろ)傾(かたふ)き。已(すで)に維高君(これたかぎみ)を春宮(とうぐう)に立べきよし其(その)御 沙汰(さた)有(あり)ければ。源信(みなもとののぶみ)。諫(いさめ)て
奏聞(そうもん)せられけるは。一の宮は名虎(なとら)の女(むすめ)の生(うみ)奉る所(ところ)にて。落胤腹(らくいんばら)にて在(ましま)せば。立太子(りうたいし)の
睿慮(ゑいりよ)恐(おそれ)ながら然(しかる)べからず候。第(だい)四の宮 維仁親王(これひとしんわう)こそ正(まさ)しく后腹(きさきばら)に生(うま)れ給へば。此(この)
皇子(みこ)を春宮(とうぐう)に立(たて)た玉ふ事 正理(しやうり)にて候と申さるゝにぞ。帝(みかど)も信(のぶみ)が諫奏(かんそう)一 理(り)あれば強(しい)て
一の宮を太子(たいし)に定め給ふ事も能(あた)はせ玉はず。殆(ほとん)ど睿慮(ゑいりよ)を定(さだめ)かね給ひ。群臣(ぐんしん)を召集(めしつどへ)て
両王子(りやうわうじ)の中(うち)何(いづ)れをか春宮(とうぐう)に立(たつ)べきやと勅問(ちよくもん)させ給ふに。列位(おの〳〵)其身々々(そのみ〳〵)の贔屓(ひいき)に