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間(あはひ)に立(たち)双方(そうはう)の息(いき)ざしをぞ見合(みあはせ)ける。諸看宦(しよけんぶつ)は息(いき)を詰(つめ)鳴(なり)を鎮(しづめ)て左右(さいう)の為体(ていたらく)
を見るに。名虎(などら)は老年(らうねん)なれども大兵(だいひやう)といひ骨組(ほねぐみ)荒(あれ)て相貌(さうぼう)猛(たけ)く善雄(よしを)は若(わか)けれ
ども小兵(こひやう)たる上 柔弱(にうじやく)なれば。吁(あゝ)此(この)相撲(すまふ)千に一ツも四の宮(みや)の方(かた)勝(かつ)べきやうなし。憐(あはれ)む
べし善雄(よしを)よしなき勝負(しやうぶ)を乞(こひ)望(のぞみ)て。今や名虎(などら)に投殺(なげころ)されんことの便(びん)なさよと思(おも)
はぬ人こそなかりけり。増(まし)て況(いはん)や維仁(これひと)君(ぎみ)の御 桟敷(さんじき)に相詰(あひつめ)し人々(ひと〴〵)は。前(ぜん)三十 番(ばん)の相(す)
撲(まふ)多(おほ)く一の宮(みや)方(がた)へ勝(かち)を取(とら)れ。何(なに)となく気力(きりよく)を落(おと)しけるに今 名虎(などら)と善雄(よしを)が剛(かう)
弱(じやく)を見て弥(いよ〳〵)心(こゝろ)も心ならず急(きう)に睿山(ゑいざん)の恵亮(ゑりやう)の許(もと)へ急馬(はやうま)を立(たて)。位定(くらゐさだめ)の頭(とう)の角力(すまふ)
只今(たゞいま)なり。一しほ丹誠(たんせい)を抽(ぬきんで)て祈(いの)らるべしと告(つげ)させける。恵亮(ゑりやう)は是(これ)を聞(きい)て今般(このたび)不覚(ふかく)を
とらば永(なが)く山門(さんもん)の恥辱(ちじよく)【耻は俗字】を遺(のこ)すべし。四の宮(みや)帝位(ていゐ)に即(つき)玉はずんば。命(いのち)生(いき)て何(なに)かせんと
憤怒(ふんぬ)の思(おもひ)胸(むね)に充(みち)炉檀(ろだん)に立(たて)たる白刃(はくじん)を把(とつ)て自己(みつから)額(ひたい)を突傷(つきやぶ)り其(その)鮮血(せんけつ)を柴(しば)に
そゝぎかけて護摩壇(ごまだん)へ打くべ。いら高(たか)珠数(じゆず)を断(きれ)るばかりに押(おし)もみ帰命頂礼(きめうてうらい)