Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 340

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兼備(かねそな)はり給ふ君(きみ)は在(ましま)さずと申あへり。貞観(でうぐわん)六年正月 元日(ぐわんじつ)に天皇(てんわう)御 元服(げんぶく)なし給ふ 御 年(とし)十五才にならせ給へり。同八年 丙戌(ひのへいぬ)閏(うる)三月十日の夜(よ)内裡(だいり)の応天門(おうてんもん)放火(はうくわ)の ために焼失(しやうしつ)しけるゆへ諸卿(しよけう)大に駭(おどろ)き其(その)犯人(ぼんにん)を鑿穿(せんさく)あるに更(さら)に知(しれ)ざりけるが 後(のち)に訴人(そにん)あつて大納言(だいなごん)伴義雄(とものよしを)が所為(しわざ)なるよし顕(あらは)れ。即時(そくじ)に召捕(めしとら)れける。其(その) 根(ね)を糺(たゞ)し聞(きく)に伴義雄(とものよしを)は去(さん)ぬる天安(てんあん)元年 位定(くらゐさだめ)の角力(すまふ)に勝(かち)たるを以(もつ)て相国(しやうこく)良(よし) 房公(ふさこう)殊更(ことさら)に贔屓(ひいき)ありて善雄(よしを)を重(おも)んじ。追々(おひ〳〵)宦位(くわんゐ)を増(まし)遂(つひ)に大納言(だいなごん)に任(にん)ぜ られける。然(しかる)に彼(かの)紀名虎(きのなどら)は前(さき)に述(のべ)し如(ごと)く曠(はれ)の角力(すまふ)に負(まけ)たるを深(ふか)く遺恨(いこん)に思(おも)ひ 気病(きびやう)を発(はつ)して遂(つひ)に病床(びやうせう)に憤死(ふんし)しけるが。其(その)悪霊(あくれう)の祟(たゝり)【崇は誤】にや。伴義雄(とものよしを)は天性(てんせい)慎(つゝしみ) 深(ふか)き人なりけるに。何時(いつ)しか憍慢(きやうまん)の心 萌(きざ)し。身(み)の行跡(かうせき)以前(いぜん)に変(かはり)て荒々(あら〳〵)しく家士(いへのこ) 奴婢(ぬひ)を科(とが)なきに笘打(むちうち)。または人の貧賎(ひんせん)を嘲(あざけ)り。人の富貴(ふうき)を妬(ねた)みけるゆへ。諸人(しよにん)善雄(よ[し]を) を憎(にく)み疎(うと)んずるやうに成行(なりゆき)けれども。それらの事にも心付(こゝろつか)ず。あはれ大臣(だいじん)の高宦(かうくわん)に昇進(せうしん)