Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

- 翻刻

 - ページ 344

ページ: 344

翻刻

けるは。当館(とうやかた)の殿(との)へ直(じき)に言上(まうしあぐ)べき一 大事(だいじ)の候御 対面(たいめん)なし玉はり候やう申入下され候へと 事 有(あり)げなる詞(ことば)に。執達(とりつぎ)の士(し)訝(いぶか)りながら。主君(しゆくん)へ其(その)旨(むね)言上(ごんぜう)しければ。良相(よしすけ)も怪(あや)しまれ 何分(なんぶん)子細(しさい)有(ある)べしとて。白砂(しらす)へ廻(まは)らせ対面(たいめん)ありて。一大 事(じ)とは如何(いか)なる義(ぎ)にやと問(とは)れける に。下郎(げらう)答(こたへ)て一大 事(じ)と申は別義(べつぎ)にも候はず。当(とう)春(はる)応天門(おうてんもん)を放火(はうくは)して焼(やき)しは。伴善(とものよし) 雄殿(をどの)にて候と言上(ごんぜう)しけるにぞ。良相(よしすけ)駭(おどろ)きながら誠(まこと)なりとせず。彼(かの)善雄(よしを)は主上(しゆぜう)を先(さき) とし奉り。相国(しやうごく)良房公(よしふさこう)も御 贔屓(ひいき)厚(あつ)く追々(おひ〳〵)宦禄(くわんろく)を増(ま)し給ふに。何(なん)ぞさる大 罪(ざい)を 犯(おか)すべき。是(こ)は你(なんじ)善雄(よしを)に恨(うらみ)あつて彼人(かのひと)を無実(むしつ)の罪(つみ)に陥(おとしい)れん巧(たく)みなるべしと申され ければ。下郎(げらう)重(かさね)て一 応(おう)の御 不審(ふしん)御 尤(もつとも)に候へども。実(まこと)は某(それがし)は大宅鷹取(おほやのたかとり)と呼(よば)るゝ浪人(らうにん) にて候が此(この)春(はる)善雄殿(よしをどの)某(それがし)を招(まね)かれ。酒食(しゆしよく)に飽(あか)しめ金銀(きん〴〵)を給(たま)ひ。你(なんじ)人しれず内裡(だいり)の 応天門(おうてんもん)に火(ひ)をさして焼(やき)なば千 金(きん)を与(あたへ)んと。誓(ちかひ)を立(たて)て頼(たのま)れ候ゆへ。欲心(よくしん)に引(ひか)れ頼(たのみ)の ごとく禁門(きんもん)に火をさして焼(やき)候ひしに。善雄殿(よしをどの)事(こと)を左右(さいう)に托(よせ)て約定(やくでう)の賞金(ほうび)を与(あたへ)