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られず候ゆへ度々(たび〳〵)催促(さいそく)し候に。我(われ)いまだ望(のぞみ)を遂(とげ)ず。左大臣信(さだいじんのぶみ)を罪(つみ)に陥(おと)し我(われ)右大臣(うだいじん)
に昇進(しやうしん)せば。契約(けいやく)の金子(きんす)を与(あたふ)べしと申されしゆへ。夏(なつ)果(はつ)る頃(ころ)まで待(まち)候へども何(なん)の沙(さ)
汰(た)もなく候ゆへ又々(また〳〵)頻(しきり)に催促(さいそく)し候ひしかば。さらば賞金(ほうび)を与(あた)ふべしとて。偽(いつはつ)て先(まづ)酒(さけ)を
多(おほ)く強(しい)。某(それがし)が熟酔(じゆくすい)せし油断(ゆだん)を見(み)すまし。力士(りきし)に命(めい)じて無体(むたい)に縛(しば)らせ牢(ろう)へ打(うち)こみ
飲食(いんしよく)とも与(あた)へず餓死(がし)せしめんとせられ候ところ。昨夜(さくや)人(ひと)定(しづまつ)て後(のち)何国(いづく)よりとも不知(しらず)さも
怕(おそろ)しげなる人 牢内(ろうない)へ来(きた)り某(それがし)に向(むか)ひ。你(なんじ)此(この)牢内(ろうない)を出(いで)て右大臣家(うだいじんけ)へいたり善雄(よしを)が犯罪(ぼんざい)
を訴(うつた)へよと言(いひ)つゝ。さしも緊(きびし)く固(かため)し牢(ろう)の戸(と)を安々(やす〳〵)と開(あけ)某(それがし)を脇挟(わきばさ)み邸(やしき)の門塀(もんへい)を
飛踰(とびこへ)て助出(たすけいだ)し候ゆへ。御 身(み)は何人(なにびと)にて某(それがし)を救(すく)ひ出(いだ)し玉はり候やと問(とひ)候へば。我(われ)は紀名虎(きのなどら)
が亡霊(ぼうれい)なり。善雄(よしを)のために位定(くらゐさだめ)の角力(すまふ)に負(まけ)無念(むねん)の魂魄(こんぱく)陽土(このよ)に残(のこ)り。善雄(よしを)を放(はう)
心(しん)させて。非分(ひぶん)の望(のぞみ)を起(おこ)し禁門(きんもん)を焼(やか)せしも皆(みな)我(わが)劫通力(がうづうりき)を以(もつ)てする処(ところ)なり。你(なんじ)早(はや)く
右大臣家(うだいじんけ)へ到(いた)り善雄(よしを)が罪(つみ)を訴訟(そしやう)し渠(かれ)を罪(つみ)に陥(おと)し。我(わが)無念(むねん)を晴(はら)させよと