Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 36

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なく兵太(ひやうだ)馬(むま)を躍(おどら)して敵中(てきちう)へ割(わつ)て入。当(あたる)を幸(さいは)ひ寄(よる)を不運(ふうん)と撃(うつ)て落(おと)すにぞ。或(あるひ)は首(かうべ)を 胴(どう)へ撃入(うちこま)れ。或(あるひ)は肩背(かたせ)の骨(ほね)を碓(くだ)かれ。一人も命(いのち)を全(まつた)ふするはなし。主将(しゆせう)如此(かくのごとく)なれば従卒(じふそつ)も是(これ) に励(はげ)まされ。曵々(ゑい〳〵)声(ごゑ)して京軍(きやうぐん)を薙立(なきたて)ける。官軍(くわんぐん)多勢(たせい)なれども金窪(かなくぼ)が強勇(がうゆう)に辟易(へきゑき)し 始(はじめ)の広言(くわうげん)も似(に)ず散々(さん〴〵)に乱立(みだれたち)多(おほ)く兵(へい)を折(くじ)きて這々(はふ〳〵)益立(ましだち)の陣(ぢん)へ逃帰(にげかへ)りければ。金窪は 手始(てはじめ)よしとて手勢(てぜい)を引(ひい)て柵(さく)へ退(しりぞ)き入にけり。益立(ましたち)は先手(さきて)の敗北(はいぼく)を見て大いに怒(いか)り。新兵(あらて) を入替(いれかへ)再(ふたゝ)び柵(さく)を攻(せめ)んと押寄(おしよする)ところに。白河(しらかは)の城戸(きど)を開(ひらい)て只(たゞ)一騎(いつき)馬(むま)を乗(のり)出(いだ)す敵(てき) あり京軍(きやうぐん)其(その)軍装(いでたち)を見れば。藤縄目(ふぢなはめ)の鎧(よろひ)に獅子(しゝ)の前立物(まへだてもの)打(うつ)たる兜(かぶと)を猪首(ゐくび)に 着(き)なし。鷲(わし)の羽(は)の征箭(そや)山の如(ごと)く刺(さい)たる箙(えひら)を負(おひ)黒漆(こくしつ)の長き太刀(たち)に同(おな)じく短刀(たんとふ)佩添(はきそへ) 握太(にぎりぶと)なる重藤(しげどふ)の弓(ゆみ)小脇(こわき)に搔込(かいこみ)八寸(やき)に余(あま)る奥州黒(おうしうくろ)の駒(こま)に鋳掛地(いかけぢ)の鞍(くら)置(おい)て 打乗(うちのつ)たり。京軍 彼(かれ)は誰(たれ)なるらんと見るに。彼(かの)武者(むしや)大音(だいおん)に。是(これ)へ出(いで)たる某(それがし)は胆沢(いざは)悪(あく) 太郎と呼(よば)れて坂東(ばんどう)八ヶ国(こく)にては三才の小児(せうに)までも名(な)を知(しら)れたる者ながら。京方(きやうがた)の