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尽(つく)しければ帝(みかど)の御 覚(おぼへ)も他(た)に勝(すぐ)れ追々(おひ〳〵)宦位(くわんゐ)を進(すゝ)め給ひけり。然(しかる)に禁廷(きんてい)には皇(くわう)
后(ぐう)日葉酢媛命(ひはすひめのみこと)崩(かくれ)させ給ひければ大和国(やまとのくに)狭々城(さゝき)の盾列(たてなみ)の池前(いけのまへ)の陵(みさゝき)に葬(ほうむ)り
奉るべしと定(さだめ)給ひけるが。此(この)頃(ころ)までは殉葬(じゆんそう)とて上古(じやうこ)の悪(あし)き風義(ふうぎ)遺(のこ)り。帝(みかど)または
女御(にようご)に御 身(み)近(ちか)く事(つかへ)奉りし公卿(こうけい)女宦(によくわん)は。其帝(そのみかど)其女御(そのにようご)崩(ほう)じ玉へば生(いき)ながら御 葬(ほうむ)
りに殉(したが)ふならはしなり。帝(みかど)《割書:垂|仁》此(この)殉葬(じゆんそう)の義(ぎ)を深(ふか)く悼(いた)ませ給ひ。此義(このぎ)を相止(あひやむ)べき
やうや有(ある)と群臣(ぐんしん)を召(めし)て勅問(ちよくもん)ありけるに。往古(いにしへ)より為(なし)きたれる式法(しきほふ)なれば今更(いまさら)奈(い)
何(かん)とも転(てん)ずべきやうもなしとて。満座(まんざ)の公卿(くげう)冠(かむり)を傾(かたむ)け誰(たれ)か一人 勅答(ちよくとふ)言上(まうしあぐ)る人も
なし。時(とき)に野見宿祢(のみのすくね)階下(かいか)に参候(さんかう)して先剋(せんこく)より諸(しよ)臣下(しんか)の勅答(ちよくとふ)を如何(いかゞ)奏聞(そうもん)有(ある)
やと耳(みゝ)を傾(かたふけ)て聞居(きゝゐ)られけるに一人も言(ことば)を発(はつ)する人なきを見(み)かね。堪(こらへ)かねて言(ことば)を発(はつ)し
小臣(せうしん)の愚見(ぐけん)いとも憚(はばかり)あれども。心中(しんちう)に存(ぞん)ずる旨(むね)を啓奏(けいそう)せざるは忠勤(ちうきん)にあらず。依(よつ)て
愚案(ぐあん)の趣(おもむ)きを述(のべ)候べし。抑(そも〳〵)殉葬(じゆんそう)の事 往古(わうご)よりの式法(しきほふ)とは申せども。陵(みさゝき)に生(いき)