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六七才 許(はかり)の神童(しんどう)立出(たちいで)て春彦(はるひこ)に向(むか)ひ。你(なんじ)菅家(かんけ)のために世継(よつぎ)を祈(いの)る事 悃(ねんごろ)なる
ゆへ天帝(てんてい)其(その)丹誠(たんせい)を感(かん)じ給ひ。丸(まろ)を以(もつ)て菅家(かんけ)の世嗣(よつぎ)となし給ふなり。丸(まろ)彼(かの)家(いへ)に
生(うま)れなば旦暮(あけくれ)你(なんじ)と睦(むつ)び交(まじは)るべしと告(つげ)玉ふと見て夢(ゆめ)は覚(さめ)けり。春彦(はるひこ)大に
怡(よろこ)びて想(おもへ)らく。夢(ゆめ)は臓気(ざうき)の二ツよりなす事(わざ)にて。思夢(しむ)とて思事(おもふこと)を夢(ゆめ)に見る
事ありといへども。是(これ)は神明(しんめい)我(わ)が誠心(せいしん)を感納(かんのう)在(ましま)し託(たく)し玉ふところの正夢(まさゆめ)に疑(うたが)ひなし
とて。両宮(りやうぐう)を拝(はい)し祈願(きぐわん)成就(じやうじゆ)の悦(よろこ)びの祝詞(のつと)を上(あげ)。霊夢(れいむ)の事(こと)を菅家(かんけ)へ言上(まうしあげ)んと承(しやう)
和(わ)十一年 夏(なつ)のはじめ。山田(やまだ)を発足(ほつそく)して都(みやこ)へぞ上(のぼ)りける。然(しかる)に菅原是善(すがはらのぜゝん)卿(けう)は世嗣(よつぎ)祈(き)
願(ぐわん)の義(ぎ)を渡会春彦(わたらへはるひこ)に頼(たの)み。自身(みづから)も朝夕(てうせき)伊勢(いせ)両皇太神宮(りやうかうだいじんぐう)を心中(しんちう)に祈念(きねん)せ
られけるに。承和(じやうわ)十一年 夏(なつ)四月 上旬(じやうじゆん)一夜(あるよ)の夢(ゆめ)に。館(やかた)【舘は俗字】の庭中(ていちう)を逍遥(せうよう)せられけるところ
遣水(やりみつ)の上(うへ)なる巌(いはほ)の肩(かた)に年(とし)の頃(ころ)五才ばかりなる位高(けだか)き童子(どうじ)の容貌(みめ)美麗(うるはし)きが忽(こつ)
然(ぜん)と停立(たゝずみ)居(ゐ)けるゆへ是善卿(ぜゝんけう)夢心(ゆめごゝろ)に不思議(ふしぎ)に思(おも)はれ你(おこと)は何国(いづく)より来(き)給へる。父母(ちゝはゝ)