Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 375

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神童(しんどう)の面貌(おもざし)に露(つゆ)違(たが)はざれば。心中(しんちう)奇異(きい)の思(おも)ひをなすうち。若君(わかぎみ)は例(れい)のごとく頻(しきり)に啼(なき)玉 ふにより。春彦(はるひこ)其(その)ゆへを問(とへ)ば。乳人(めのと)答(こたへ)て。御 誕生(たんじやう)ありてより以来(このかた)昼夜(ちうや)とも啼(なき)むつかり 給へば医薬(いやく)加持(かぢ)祈祷(きとう)百般(いろ〳〵)手(て)を尽(つく)せども啼止(なきやみ)玉はざるよしを語(かたり)けるにぞ。春彦(はるひこ)懊悩(きのどく) におもひ。試(こゝろみ)に乳人(めのと)が抱(いだき)たる若君(わかぎみ)を抱(だ)きとりけるに。若君(わかぎみ)は春彦(はるひこ)の面(おもて)を見玉ひて忽(たちま) ち啼止(なきやみ)給ひ完示々々(にこ〳〵)笑(ゑ)ませ給ひければ。北方(きたのかた)を先(さき)とし乳人(めのと)侍女(こしもと)們(ら)も。是(こ)は不測(ふしぎ)なる 事(こと)かなとて乳人(うば)侍女(こしもと)們(ら)の手(て)へ抱(だき)とれば又 啼出(なきだ)し給ひ。春彦(はるひこ)が抱(いだき)まゐらすれば啼(なき) 止(やみ)給ふゆへ是善卿(ぜゝんけう)も不審(ふしん)の事に思(おも)はれ春彦(はるひこ)を館(やかた)【舘は俗字】に留(とゞめ)て若君(わかぎみ)を守傅(もりかしづ)かせたまひ ける。春彦(はるひこ)も若君(わかぎみ)の斯(かく)馴添(なづさひ)給ふに付(つき)て御 側(そば)を離(はなれ)まゐらすに不忍(しのびず)山田(やまだ)の私宅(したく)には子(し) 息(そく)春躬(はるみ)在(あつ)て家務(かむ)を脩(おさむ)るに事(こと)足(たれ)ば。身(み)は菅家(かんけ)に留(とゞま)り家士(いへのこ)の如(ごと)く昼夜(ちうや)とも若君(わかぎみ)の 側(かたはら)を去(さら)ず守傅(もりかしづ)きけり此(この)春彦(はるひこ)は若冠(じやくくわん)の頃(ころ)より白髪(しらが)多(おほ)く生(はへ)三十才 過(すぎ)てよりは頭髪(づはつ) 尽(こと〴〵)く白(しろ)く成(なり)けるゆへ世人(よのひと)皆(みな)白太夫(しらたいふ)と異名(いみやう)しける。菅家(かんけ)の若君(わかきみ)を稚名(おさなゝ)を阿子(あこ)《割書:又三|とも云》と呼(よび)