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けるが三才にならせ給ふ頃(ころ)よりは春彦(はるひこ)を白大夫(しらたいふ)〳〵と呼(よび)給ひて弥(いよ〳〵)まはし馴(なれ)睦(むつび)給ひけり。然(しかる)
に一時(あるとき)白太夫(しらたいふ)若君(わかぎみ)を負(おひ)まいらせ乳人(めのと)侍女(こしもと)も付添(つきそひ)て物詣(ものまうで)し。其(その)帰路(かへるさ)内裏(だいり)の談天文(だんてんもん)の辺(ほとり)
を通(とふ)りけるに若君(わかぎみ)春彦(はるひこ)に負(おは)れながら門(もん)の額(がく)をつく〴〵とながめ給ひしに館(やかた)【舘は俗字】へ帰(かへ)り給ひて
後(のち)自(みづか)ら小(さゝ)やかなる手(て)に筆(ふで)を執(とり)紙(かみ)をのべて談天(だんてん)の二 字(じ)を書(かき)給ふ。其(その)筆勢(ひつせい)自然(おのづから)空海(くうかい)和(お)
尚(しやう)の筆意(ひつい)に似(に)たりければ。是善卿(ぜゝんけう)を首(はじめ)とし春彦(はるひこ)乳人(めのと)其余(そのよ)の輩(ともがら)も驚嘆(きやうたん)し。此(この)若君(わかぎみ)
漸(よふや)く三才(みつ)になり給ひ。いまだ手習(てならひ)もし玉はざるに。内裏(だいり)の門(もん)の額(がく)を一目(ひとめ)見て早(はや)く其(その)文字(もんじ)を記(お)
憶(ぼへ)給ひて書(かき)給ふのみならず。筆勢(ひつせい)墨色(すみいろ)凡(たゞ)ならざるは凡人(ぼんにん)にては在(ましま)さず。後世(こうせい)恐(おそ)るべしと
衆人(みな〳〵)舌(した)を巻(まい)て恐(おそ)れ感(かん)じ。是善卿(ぜゝんけう)御 夫婦(ふうふ)も是(これ)を奇(き)とし倍(ます〳〵)御 寵愛(てうあい)深(ふか)く。是(これ)より
若君(わかぎみ)を菅秀才(かんしうさい)とぞ申ける。斯(かく)て七才になり給ふ春(はる)其頃(そのころ)博学(はくがく)宏才(くわうさい)の聞(きこ)え高(たか)き都(みやこ)の
良香(よしか)《割書:世(よ)に都(と)|良香(りやうけう) ̄ト云》といふ人の許(もと)へ入門(にふもん)させられ筆道(ひつどう)文学(ぶんがく)を学(まな)ばせられけるに。一を聞(きい)て十を知(しる)の
俊才(しゆんさい)なれば。師(し)の良香(よしか)も驚嘆(きやうたん)せらるゝ事 数度(あまたゝび)に及(およ)びけり。斯(かく)て文徳天皇(もんどくてんわう)の齊衡(さいかう)二