Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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忍(しの)びて通(かよ)ふ女のもとへ一 首(しゆ)の哥(うた)を詠(よみ)てつかはしける其歌(そのうた)に曰   立(たち)わかれいなばの山の峯(みね)におふるまつとし聞(きか)ば今(いま)かへりこん 此哥(このうた)勝(すぐ)れたる秀逸(しういつ)なりと世人(よのひと)賞美(せうび)しあひ。貫之(つらゆき)も古今集(こきんしう)に加(くは)へけり。斯(かく)哥道(かどう) にも達(たつ)し博学(はくがく)宏才(かうさい)にて経済(けいざい)の道(みち)にも賢(さか)しく。国益(こくえき)に成(なる)べきこと事をも是彼(これかれ)計(はかり)定(さだ) められければ元慶(げんきやう)六年 中納言(ちうなごん)に任(にん)ぜられけり。行平(ゆきひら)また鷹(たか)を使(つかふ)事に妙(めう)を得(え)られし かば卿相(けいせう)の中(うち)に。行平(ゆきひら)に遺恨(いこん)ある人 君(きみ)に勧(すゝ)め奉り。行平(ゆきひら)に鷹飼(たかかひ)の役(やく)を命(めい)じ玉はゞ 一(ひと)しほ御 得物(えもの)多(おほ)く候べしとぞ奏(そう)しける。是(これ)行平(ゆきひら)に恥辱(ちぢよく)【耻は俗字】を与(あたへ)んとの巧(たく)みなりけるを。君(きみ) は何(なん)の御心(みこゝろ)もつかせ玉はず。鷹飼(たかかひ)の宣下(せんげ)ありしなり。行平(ゆきひら)右の倫命(りんめい)を奉(うけたま)はりて大いに 不興(ふけう)し。我(われ)王氏(わうし)の末葉(ばつよう)たる上 中納言(ちうなごん)に任(にん)ぜられ。知命(ちめい)の齢(よはひ)をも過(すご)せしに。かゝる卑劣(ひれつ)の 役義(やくぎ)を蒙(かふむ)るこそ安(やす)からねと憤(いきどう)りけれども倫言(りんげん)なれば辞退(じたい)せんやうもなく已事(やむこと)を得(え) ず渋々(しぶ〳〵)に領掌(れうぜう)はしながら。心(こゝろ)怏々(わう〳〵)として楽(たのし)まず。疾(とく)にも致(つかへを)仕(かへさ)ばかゝる恥辱(ちじよく)は蒙(かうむ)る