Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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まじきものをとて。意(こゝろ)に浮(うか)むまゝ述懐(じゆつくわい)の哥(うた)を詠(えい)じ一際(ひときは) 花麗(くわれい)なる狩衣(かりきぬ)の袖(そで)に書付(かきつけ) てそれを着(ちやく)し御狩(みかり)の供奉(ぐぶ)に従(した)がはれける其(その)哥(うた)に曰   翁(おきな)さび人なとがめそ狩(かり)ころもけふばかりとて田鶴(たづ)もなくなる 哥(うた)の意(こゝろ)は我(われ)かく年(とし)闌(たけ)て若々(わか〳〵)しき狩衣(かりぎぬ)を着(き)たるを老(おひ)て花美(くわび)【芲は俗字】を飾(かざ)ると諸人(もろびと)咎(とが)め わらふ事なかれ。是(これ)も今日(けふ)ばかりぞ明日(あす)は宦職(くわんしよく)を辞(じ)する身(み)なりとなり。翁(おきな)さびとは老(おひ) たる身(み)に伊達(だて)を飾(かざ)る事なり。凡(すべ)て翁(おきな)さび小女(をとめ)さびなど詠(よめ)るは爽(さはやか)か【衍】なる事にてやつれ 寂(さび)たる意(い)には非(あら)ず。神(かみ)さびたりといふも社(やしろ)の巍々(ぎゝ)として尊(たうと)げに見(み)こみ有(ある)事をいふなり 然(しかる)に帝(みかど)路次(ろし)にて不斗(ふと)行平(ゆきひら)の狩衣(かりぎぬ)の哥(うた)を御覧(ごらん)ありて大いに逆鱗(げきりん)まし〳〵。彼(かれ)が哥(うた)は 我(われ)王孫(わうぞん)にて宦(くわん)中納言(ちうなごん)に任(にん)ぜられ殊更(ことさら)年(とし)闌(たけ)たるに。何(なに)ゆへかゝる卑劣(ひれつ)の役(やく)を命(めい)じけるぞ明(あ) 日(す)は仕(つかへ)を辞(じ)して退隠(たいいん)の身(み)と成(なる)べしとの意(こゝろ)を一 首(しゆ)の中(うち)にこめ。人な咎(とが)めそとよみけふ計(ばかり) とて田鶴(たづ)も啼(なく)なるとつらねしは。朕(ちん)を恨(うら)み不徳(ふとく)の君(きみ)なりと世人(よのひと)に諷聴(ふうてう)する詠哥(えいか)なり