← 前のページ
ページ 405 / 521
次のページ →
翻刻
宦吏(やくにん)に追立(おつたて)られ。大いに周障(あはて)途(ど)に迷(まよ)ひけるを。主上(しゆぜう)宝輦(ほうれん)の内より御覧(ごらん)在(ましま)し。不便(ふびん)の
事(こと)に思召(おぼしめし)還御(かんぎよ)の後(のち)御 沙汰(さた)ありて洛中(らくちう)左牝牛(さめうし)といふ街(まち)にみせや店屋(てんおく)を建(たて)させ無縁(むえん)の盲(もう)
人(じん)を其所(そのところ)にて養(やしな)ひ住(すま)せ給ひ。且(かつ)また盲人(もうじん)の宦楷(くわんかい)を定(さだ)め玉へり其(その)上座(せうざ)する盲人(もうじん)を座(ざ)
頭(とう)と言(いひ)ならはせけり。実(まこと)に盲人(もうじん)たる者は此君(このきみ)の御 哀憐(あいれん)を仰(あふ)ぎ尊(たうと)むべき御事なり。後(こう)
年(ねん)帝(みかど)《割書:光|孝》崩御(ほうぎよ)在(ましま)して後(のち)諸国(しよこく)より盲人(もうじん)們(ども)都(みやこ)へ上(のぼ)り光孝天皇(くわうかうてんわう)の御 忌日(きにち)をとむら弔(とふら)【吊は俗字】ひ奉(たてまつ)
るとて三 条(でう)四条の川原(かはら)に群集(くんじゆ)し七月廿日より同廿六日まで御追福(ごつひふく)の法事(ほふじ)をなす事
年々(とし〴〵)恒例(がうれい)となしけり。諸人(しよにん)是(これ)を見んとて川原(かはら)へ群集(くんじゆ)す。残暑(ざんしよ)の節(せつ)なれば是(これ)を納涼(すゞみ)
と謂(いへ)り。但(たゞ)し御 正忌(しやうき)は八月なれども。御 法事(ほふじ)を七月に執行(とりおこなふ)ものは。于蘭盆会(うらぼんゑ)【ママ】を兼行(かねおこなふ)意(こゝろ)
とかや。今の世(よ)盲人(もうじん)の宦位(くわんゐ)を久我家(こがけ)より免(ゆる)し授(さづ)けらるゝも。久我(こが)は光孝天皇(くわうかうてんわう)の御末(みすへ)
華族(くわぞく)たる故(ゆへ)なり。盲人の宦位(くわんゐ)の名目(みやうもく)は。右 川原(かはら)の御 弔(とふら)ひに四ケ 度(ど)上(のぼ)りたる者を四分(しぶん)と号(がう)し
八ケ 度(ど)上(のぼ)りたるを四度(しど)と号(がう)し。十二ケ度上りしを勾当(こうとう)と号(がう)し。十六ケ度上りし者を撿挍(けんぎやう)