Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 423

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庶幾(こひねがはく)は今宵(こよひ)の御 引出物(ひきでもの)に北堂(きたのかた)を我(われ)に賜(たまは)らんやと傍若無人(ばうじやくぶじん)に所望(しよもう)せられけるに。国(くに) 経(つね)は大いに酔(ゑひ)しれたる折(をり)なれば只(たゞ)是(これ)当座(とうざ)の戯言(たはむれ)なりと心得(こゝろえ)何(なん)の思慮(しりよ)もなく。御所望(こしよもう)と あらば国経(くにつね)が命(いのち)をも進(まいら)すべし。増(まし)て況(いわんや)賎妻(せんさい)に於(おいて)おや。具(ぐ)して還(かへり)給へともつれ舌(した)に答(こたへ)其 儘(まゝ)席上(せきぜう)に酔伏(ゑひふさ)れける。時平(ときひら)仕(し)すましたりと独(ひとり)笑(ゑみ)し北堂(きたのかた)を無体(むたい)に引立(ひつたて)。席を立(たつ)て玄関(げんくわん)へ出 婦人(ふじん)を我車(わがくるま)へ抱(いだ)き乗(のせ)。其身(そのみ)もともに乗(のり)て我館(わがやかた)【舘は俗字】へぞ還(かへ)られける。誠(まこと)に乱行(らんげう)とも無道(ぶどう)とも 論(ろん)ぜんやうなき行条(ふるまい)なりけり。国経(くにつね)は夜風(よかぜ)の身(み)に寒(しむ)に酔(ゑひ)醒(さめ)て眼(め)を覚(さま)し。座辺(あたり)を見れば 時平(ときひら)以下(いげ)は已(すで)に還(かへ)られしと覚(おぼ)しく。只(たゞ)杯盤(はいばん)【盃は俗字】器皿(きべい)の狼藉(らうぜき)たる計(ばかり)成(なれ)ば。近侍(きんじ)の女房(にようはう)に北堂(きたのかた)の 義(ぎ)を問(とは)れけるに女房(にようばう)答(こたへ)て。前(さき)に時平(ときひら)の君(きみ)御台所(みだいどころ)を引連(ひきつれ)て立(たち)給ひしゆへ。何方(いづれ)へ伴(ともな)ひ玉ふ やと問(とひ)奉り侍(はべり)しに。叔父君(おぢぎみ)の我(われ)に賜(たまは)りしゆへ将(い)て帰(かへ)るなりと曰(のたま)いて。御車(みくるま)に乗(のせ)まいらせ御身(おんみ) もともに乗(めし)て帰(かへ)り玉へりと言(まうし)けるにぞ。国経(くにつね)以(もつて)の外(ほか)に駭(おどろ)き我(われ)酩酊(めいてい)して何事(なにごと)を言(いひ)しか更(さら)に 覚(おぼへ)ず時平(ときひら)にも酒興(しゆけう)に乗(ぜう)じ。当座(とうざ)の戯(たはむ)れに将(つれ)て帰(かへ)られしならめ。急(いそ)いで迎(むかひ)を遣(つか)はせよと