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【頭部欄外 縦書き題箋を左頭にして横に置いた形】
《題:扶桑皇統記図会《割書:後編》五》
【本文】
菅公(かんこう)は裁判(さいばん)正(たヾ)しく然(しか)も仁恕(じんじよ)を旨(むね)として訴(うつたへ)を聴(きゝ)給ふ我(われ)猶(なほ)人の如(ごと)くなるゆへ裁断(さいだん)少(すこし)も
滞(とゞこふ)りなきを以(もつ)て諸人(しよにん)悦伏(ゑつふく)し。御 当番(とうばん)の月は自然(おのづから)訴人(そにん)少(すくな)く。衆人(しゆうじん)菅公(かんこう)明断(めいだん)を感(かん)じ
賞美(せうび)するに付(つき)ては。時平(しへい)の不決断(ふけつだん)薄徳(はくとく)を誹(そしら)ぬ者はなかりけり。左府(さふ)《割書:時平|の事》いつしか此事(このこと)
を聞(きゝ)て菅公(かんこう)の名誉(めいよ)を妬(ねた)み。君(きみ)に讒奏(ざんそう)して宦位(くわんゐ)を削(けづり)落(おと)さんと思(おも)はれけれども。素(もとよ)り
忠正(ちうせい)の菅公(かんこう)一 点(てん)の御 過失(あやまち)も無(な)ければ。讒奏(ざんそう)すべき種(たね)もなく。あはれ事がな出来(いでこ)よかしと
思(おも)はれけるに。彼(かの)源光(みなもとのひかる)は菅公(かんこう)に位階(ゐかい)を超(こえ)られたるを無念(むねん)に思(おも)ひ。時平(しへい)に阿(おもね)り諂(へつら)ひて
倶(とも)に菅公(かんこう)を退(しりぞけ)んと謀(はか)り。加之(しかのみ)ならず泉大将(いづみのだいせう)定国(さだくに)。大納言(だいなごん)清貫(きよつら)。右中弁(うちうべん)希世(まれよ)。藤菅(とうのすが)
根(ね)。平貞文(たいらのさだぶん)。紀蔭連(きのかげつら)なんど。日来(ひごろ)左府(さふ)に阿諛(あゆ)する輩(ともがら)菅公(かんこう)を妬(ねた)み時々(より〳〵)時平(しへい)の館(やかた)【舘は俗字】
に会合(くわいがふ)し。専(もつぱ)ら菅公(かんこう)を追退(おひしりぞ)くべき邪謀(じやばう)をぞ商議(しやうぎ)しける
扶桑皇統記図会後編巻之五畢