← 前のページ
ページ 46 / 521
次のページ →
翻刻
魚鱗(ぎよりん)に備(そな)へ煙嵐(ゑんらん)を巻(まい)て駈来(かけきた)り悪(あく)太郎 真先(まつさき)に馬(むま)を進(すゝ)めて益立(ましだち)が勢(せい)に会釈(ゑしやく)もなく
撃(うつ)てかゝり当(あた)るを幸(さいはひ)に切(きつ)て落(おと)すにぞ。麾下(きか)の士卒(しそつ)們(ら)も是(これ)に励(はげ)まされて敵(てき)を打立(うちたて)ける
是(これ)に駭(おどろ)きて益立(ましだち)が勢(せい)騒(さは)ぎ立(たち)ければ栗原(くりはら)蘇(よみがへ)りたる心地(こゝち)し胆沢(いざは)と一隊(いつて)に成(なつ)て敵(てき)に
あたるに依(より)京軍(きやうぐん)足場(あしば)を追捲(おひまくら)れしらけ渡(わたつ)て見えたりける。大将(たいしやう)継縄(つぐなは)は敵方(てきがた)の旗(はた)
色(いろ)の整(なを)りしを見て心 怒(いか)り。斯許(かばかり)の小敵(せうてき)に勝得(かちえ)ざる事やあると。隊(そなへ)を押出(おしいだ)さんとする
ところに。賊方(ぞくがた)の遊軍(ゆうぐん)田理(わたり)五郎 何国(いづく)より廻(まは)りけん五百 余騎(よき)にて継縄(つぐなは)が陣(ぢん)の後(うしろ)より
伐(うつ)てかゝる。継縄(つぐなは)駭(おどろ)きながら士卒(しそつ)を下知(げぢ)して是(これ)を防(ふせ)がせ国岳源吾(くにおかげんご)同苗(どうめう)六郎に一千
騎(ぎ)を授(さづけ)て先陣(せんぢん)の味方(みかた)を佐(たすけ)しめ。自身(みづから)は一千騎にて田理(わたり)が勢(せい)と挑(いど)み戦(たゝか)ひけり。国岳(くにおか)は
兄弟(きやうだい)二人心を一致(いつち)にし。一千 騎(ぎ)を引率(いんぞつ)し馬(むま)を真先(まつさき)に進(すゝめ)て川を渡(わた)し。味方(みかた)の勢(せい)に
馳加(はせくは)はりければ古佐美(こさみ)。益立(ましだち)が勢(せい)是(これ)に気(き)を整(なを)し。又 敵(てき)を追立(おつたて)ける。元来(ぐわんらい)小勢(こぜい)の賊(ぞく)
軍(ぐん)数剋(すこく)の戦(たゝか)ひに疲(つか)れし上(うへ)敵(てき)に新兵(あらて)加(くは)はりしかば散々(さん〴〵)に撃(うち)立(たて)られ手負(ておひ)戦死(うちじに)数(かづ)