Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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  駅長(えきちよう)《振り仮名:莫_レ驚時変改|おどろくことなかれときのへんじあらたまるを》  一栄(いちゑい)一落(いちらく)是(これ)春秋(しゆんじふ) 駅長(えきてう)是(これ)を拝聴(はいてう)して深(ふか)くか感慨(かんがい)し涙(なみだ)を落(おと)しける。然(しかる)に其夜(そのよ)より大いに逆風(ぎやくふう)吹出(ふきいだ)しけれ ば順風(じゆんふう)に吹(ふき)なほるまでとて。長(てう)が許(もと)に逗留(とうりう)し給ふ事三日にして漸(よふや)く風(かぜ)追風(おひて)に なりけるゆへ。船子(ふなこ)より其(その)よし言上(まうしあげ)けるにより。菅公(かんこうい)長(てう)に別(わかれ)を告(つげ)て御 船(ふね)にぞ乗(めさ)れ ける。駅長(えきてう)は逆風(むかふかぜ)の十年(とゝせ)廿年(はたとせ)吹続(ふきつゞけ)かしと祈(いのり)し甲斐(かひ)なく。今更(いまさら)別(わか)れ奉るを悲(かなし) み船中(せんちう)の御 慰(なぐさめ)にとて種々(くさ〴〵)の物(もの)を献(たてまつ)り涙(なみだ)ながら御 見送(みおくり)をなし奉りける。物(もの)の哀(あはれ)を しらぬ船子(ふなこ)ども。早(はや)纜(ともづな)を解(とい)て漫々(まん〳〵)たる海上(かいせう)へ乗出(のりいだ)し帆(ほ)を曳揚(ひきあげ)て追風(おひて)を孕(はらま)せ 御船(みふね)を走(はしら)せけるにぞ。駅長(えきてう)は御 船影(ふなかげ)の見えぬ迄(まで)足(あし)を翹(つまだて)て見送(みおく)り進(まい)らせ泣々(なく〳〵)家(いへ) 路(ぢ)へ帰(かへ)りけり。去程(さるほど)に菅公(かんこう)は所(ところ)狭(せまき)御 船(ふね)の中(うち)より浦山(うらやま)の景色(けしき)を御 覧(らん)ずるにも。一年(ひとゝせ) 讃岐(さぬき)の任(にん)に下(くだ)り給ひし時(とき)は。風景(ふうけい)を翫(もてあそ)び詩歌(しいか)の御 詠吟(えいぎん)有(あり)しに。今は夫(それ)には相反(ひきかへ)て。東(あづま)の 旅(たび)に赴(おもむき)し彼(かの)業平(なりひら)にあらねども。沖(おき)の鴎(かもめ)や都鳥(みやこどり)にいざ事(こと)問(とは)ん便(よすが)もなく。胡地(こち)にさまよふ