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昔(むかしは)《振り仮名:被_二栄花_一|ゑいぐわをかうむりて》簪纓(さんゑいを)縛(まとひ) 今(いまは)《振り仮名:為_二敗謫_一|はいてきとなつて》草莱(さうらいに)由(よる)
月光(けつくわう)《振り仮名:似_レ鏡無_レ明_レ罪|かゞみににたれどもつみをあきらむるなし》 風気(ふうき)《振り仮名:如_レ刀不_レ断_レ愁|とうのごとくなれどもうれひをたゝず》
《振り仮名:随_レ見随_レ聞|みるにしたがひきくにしたがひ》皆(みな)惨慓(しんへうたり) 此(この)秋(あき)独(ひとり)《振り仮名:作_二我身秋_一|わがみのあきとなる》
斯(かく)御 物(もの)おもひがちに月日(つきひ)を送(おくり)給ふぞ御 痛(いた)はしかりける。抑(そも〳〵)太宰府(だざいふ)には都府楼(とふろう)とて
天智天皇(てんちてんわう)の御宇(ぎよう)に建(たて)られし宦舎(くわんしや)有(あり)又同じ帝(みかど)の勅願(ちよくぐわん)にて御 建立(こんりう)有(あり)し観音寺(くわんおんじ)
といふ梵刹(てら)もあり。菅公(かんこう)は兼(かね)て観音(くわんおん)を御 信仰(しんかう)在(ましま)し。和州(わしふ)初瀬寺(はせでら)の縁起(えんぎ)をも自(じ)
筆(ひつ)に書(か[ゝ])せ給ひし程(ほと)の御事なれば。御 参詣(さんけい)も有(ある)べきなれども。不出門(ふしゆつもん)とて門(もん)を出(いで)
じとの誓(ちかひ)を立(たて)給へば都府楼(とふろう)へも登(のぼり)玉はず。観音寺(くわんおんじ)へ御 仏詣(ぶつけい)もなく。只(たゞ)余所(よそ)にのみ
見(み)なし給ひ一時(あるとき)不出門(ふしゆつもん)といふ題(だい)にて作(つく)らせ給ふ詩に曰
《振り仮名:一従_三謫居就_二柴荊_一|ひとたびてききよしてさいけいにつきしより》 万死(ばんし)兢々(けう〳〵)跼蹐(きよくせきの)情(じやう)
都府楼(とふろうは)纔(わづかに)《振り仮名:看_二瓦色_一|かはらのいろをみ》 観音寺(くわんおんじは)只(たゞ)《振り仮名:聴_二鐘声_一|かねのこゑをきく》